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【論文掲載】新たな複合がんワクチン療法を開発~がん免疫療法の奏効率向上を目指して~

本研究成果のポイント

  • 標準治療が無効となった食道癌患者に対して行った臨床試験で、複合がんワクチン療法によって全ての症例でがん抗原特異的免疫反応を惹起することができた。
  • 担がんマウスモデルを使った検討で、抗PD-1抗体薬に対して治療抵抗性を示すがんに対しても、複合がんワクチンを併用することで高い抗腫瘍効果を発揮することが確認され、複合がんワクチン療法は免疫チェックポイント阻害剤に併用することで奏効率向上に寄与する可能性が示された。

研究概要

京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器内科学 講師 石川剛、教授 伊藤義人ら研究グループは、進行食道癌患者に対するがんワクチン療法の臨床試験において、アジュバント(*1)としてPoly-ICLC(*2)を用いることで、投与したすべての患者で安全に強い免疫誘導を起こすこと、さらにマウスを用いた実験で抗PD-1抗体薬耐性のがんに対しても、この複合がんワクチン療法の併用により高い抗腫瘍効果が発揮できることを示し、本件に関する論文が、科学雑誌『Cancer Immunology, Immunotherapy誌』(2021年3月)に掲載されましたのでお知らせします。 
本研究は、三重大学・珠玖洋教授らのグループとの共同研究により実施され、単独では効果を発揮することが難しいと考えられているがんワクチン療法において、アジュバントとしてPoly-ICLCを用いた今回の複合がんワクチン療法では、標準治療が無効となった進行がん患者においてもがん抗原特異的免疫誘導を強く惹起できることを証明しました。また、抗PD-1抗体薬などで免疫抑制的ながん微小環境の是正を図ることにより、がんワクチン単独療法あるいは抗PD-1抗体単独療法では治療抵抗性であっても、両薬剤の併用療法により高い抗腫瘍効果を発揮できる可能性が実験モデルにおいて示されました。本研究成果をもとに、今後、有効な複合的がん免疫療法の開発につながることが期待されます。
*1.アジュバント:ワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫誘導能)を高めるために使用される物質のこと。がんワクチン療法においても、アジュバントの重要性が指摘され、有効なアジュバントの開発が求められています。
*2.Poly-ICLC:ウイルスRNAを模倣した合成二本鎖RNAであるPoly ICは免疫細胞を活性化する作用があります。これを化学修飾し血中でも安定化させた化合物がPoly-ICLCで、Poly-ICよりも高い免疫刺激活性があることが報告されています。

論文概要

論文名:Safety and antibody immune response of CHP-NY-ESO-1 vaccine combined with poly-ICLC in advanced or recurrent esophageal cancer patients
雑誌名(掲載日):Cancer Immunology, Immunotherapy誌(2021年3月)
代表研究者 所属・氏名 
京都府立医科大学大学院 消化器内科学 石川 剛、
三重大学大学院 個別化がん免疫治療学 影山慎一
共同研究者 
京都府立医科大学大学院 消化器内科 岡山哲也
京都府立医科大学大学院 消化器内科 古倉 聡
京都府立医科大学大学院 消化器内科 伊藤義人
三重大学大学院 個別化がん免疫治療学 宮原慶裕
三重大学大学院 個別化がん免疫治療学 王 立楠
三重大学大学院 個別化がん免疫治療学 珠玖 洋
東京医科大学 病理学 佐藤永一
順天堂大学大学院 免疫学 八木田秀雄
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