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【論文掲載】すべての変異型を逃さない新型コロナウイルス感染症治療薬候補の開発~薬剤耐性株が生じない創薬に期待~

研究のポイント

  • 新型コロナウイルスの感染受容体であるACE2タンパク質を指向性進化法(注1)と呼ばれるタンパク質工学的手法により改変し、ウイルスとの親和性を約100倍高めることに成功しました。
  • この高親和性ACE2を用いた中和タンパク質(改変ACE2受容体)はハムスターの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)モデルにおいて高い治療効果を示しました。
  • 中和抗体などの抗体製剤は薬剤耐性をきたす逃避変異(注2)が問題となりますが、本改変ACE2受容体は、新型コロナウイルスの感染受容体であるACE2タンパク質を用いているため、逃避変異株の出現は観察されず、感染症を克服するまで使い続けることができます。
  • 改変ACE2受容体は、これまでに問題となってきた感染力が強いN501Y変異や免疫逃避型E484Kを持つ変異株に対しても良好な中和活性を示します。

 研究概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学 星野温 助教、大阪大学蛋白質研究所 高木淳一 教授、高等共創研究院 岡本徹 教授(微生物病研究所兼任)らの研究グループは新型コロナウイルスが感染する際の受容体であるACE2タンパク質を改変してウイルスとの結合力を約100倍にまで高め、抗体製剤と同等の治療効果を持つウイルス中和タンパク質(改変ACE2受容体)を開発しました。この改変ACE2受容体は抗体製剤等を用いた治療で懸念されるウイルス変異株による治療効果の減弱が起こらない大きな利点があります。今年に入り感染拡大の原因となったイギリス株(N501Y 変異)や免疫逃避型系統株(E484K 変異)に対しても有効で、直近の検討では今後広がりが懸念されるインド株(L452R変異)に対しても効果が確認できました。またウイルスが変異により改変ACE2受容体から逃避した場合、その変異ウイルスは細胞表面のACE2タンパク質にも結合できず細胞侵入を果たせなくなります。そのため将来にわたり本受容体に対する逃避変異株が生じる心配がなく、新型コロナウイルス感染症が克服されるまで使い続けることができると期待されます。本研究成果は2021年6月21日(月)に英国科学雑誌Nature Communications誌に掲載されました。
概要図. 改変ACE2受容体は抗体製剤と同等の中和活性を持ちすべての変異株に有効。

論文情報

論文名:
Engineered ACE2 receptor therapy overcomes mutational escape of SARS-CoV-2
「改変ACE2受容体は新型コロナウイルスの逃避変異を克服する」
Yusuke Higuchi1, Tatsuya Suzuki, Takao Arimori, Nariko Ikemura, Emiko Mihara, Yuhei Kirita, Eriko Ohgitani, Osam Mazda, Daisuke Motooka, Shota Nakamura, Yusuke Sakai, Yumi Itoh, Fuminori Sugihara, Yoshiharu Matsuura, Satoaki Matoba, Toru Okamoto*, Junichi Takagi*, Atsushi Hoshino*
責任著者:星野温、高木淳一、岡本徹
掲載誌:Nature Communications 6月21日(日本時間18:00)オンライン掲載
    DOI: 10.1038/s41467-021-24013-y
 
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