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【論文掲載】肺切除術後の肺静脈血栓症・脳梗塞症発症の高リスクについて,周術期管理を担う麻酔科医師に警鐘

本研究成果のポイント

〇1989年から2024年の過去36年間に各国から46報67件の肺切除後の肺静脈血栓症・臓器梗塞の症例報告のうち、39報(84.8%)は2010年以後の報告であるため、ビデオ補助胸腔鏡手術(video-assisted thoracic surgery, VATS)の普及が関与している可能性があります。
〇上記67件の症例報告のうち、35件(52.2%)は脳梗塞、 17件(25.3%)は肺静脈血栓、8件(11.9%)は腎梗塞、4件(6.0%)は四肢の虚血、3件(4.5%)は脾臓梗塞でした。
肺葉切除術後の肺静脈血栓症や脳梗塞の発症については、大半は術後20日以内、術後5日目あたりに発症していました。
2013年以後、22件の臨床研究の報告によると、肺葉切除術の0.14%〜0.52%が脳梗塞を発症しており、脳梗塞を発症した29.3%〜77.3%が左上葉切除と報告されています。左上葉切除が圧倒的に多い理由として、左肺静脈切断端が他の部位より有意に長くなる傾向があり、肺静脈切断端血栓が形成されやすいことが指摘されています。
肺葉手術後の脳梗塞発症などのハイリスク症例に対し、術後早期の抗凝固療法の適応検討が必要です。術後の血栓形成に影響を与える周術期の輸液管理や、術後早期の抗凝固療法導入と対立する持続硬膜外麻酔の適応是非については重要な検討課題です。
 

研究概要

 京都府立医科大学附属病院 病院長 佐和貞治,京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 助教 Saeyup Pipat,同 助教 木下真央,同 病院助教 甲斐沼篤,同 講師 小川 覚,同 教授 天谷文昌,近畿大学医学部 麻酔科学講座 講師 秋山浩一らの研究グループは,肺葉手術後の肺静脈血栓症に由来する塞栓症・脳梗塞発症の高リスクに関する総説をまとめ,公益社団法人日本麻酔科学会(Japanese Society of Anesthesiologists)の英文学術誌『Journal of Anesthesia』に2024年8月10日付けでオンライン掲載されましたのでお知らせします.
 本論文では,肺手術後の肺静脈血栓症や臓器梗塞発症に関する過去40年間の世界の報告文献から,肺手術でハイリスクとなる手術部位,術後発症形態(肺静脈血栓症,臓器梗塞,脳梗塞など)・発症日の傾向について統計学的に解析し,特に,肺手術の周術期管理に関わる麻酔科医に対し,肺手術でのハイリスクの把握や血栓症・塞栓症予防を取組む中で,術後の迅速な抗血栓療法の適応に影響を与える持続硬膜外麻酔の是非について提唱しています.
 

論文情報

雑誌名 Journal of Anesthesia
発表媒体 オンライン速報版
雑誌の発行元国 日本
オンライン閲覧 可 https://link.springer.com/article/10.1007/s00540-024-03389-3
掲載日 2024年8月10日(日本時間)
論文タイトル(英)
 Pulmonary vein stump thrombosis and organ infarction after lung lobectomy
代表著者

 京都府立医科大学附属病院 佐和貞治
共同著者 
 京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 Saeyup Pipat
 京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 木下真央
 京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 甲斐沼 篤
 京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 小川 覚
 京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 天谷文昌
 近畿大学医学部 麻酔科学講座 秋山浩一

 
プレスリリース資料はこちら

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