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【論文掲載】マイクロプラスチックの経口摂取が高脂肪食条件下での代謝障害を悪化させる

本研究成果のポイント

○マイクロプラスチック(用語解説1)は直径5mm以下の小さなプラスチック粒子であり、近年、身の回りの環境を広く汚染していることが報告されています。また、マイクロプラスチックを経口的に摂取することによる健康被害も懸念されつつあります。一方、本邦を含む先進国においては食の欧米化のために脂肪摂取量が増加しています。脂肪摂取量の増加により腸内細菌叢が乱れることで、リーキーガット症候群(用語解説2)を発症することが知られています。
○本研究では、野生型マウスに普通食または高脂肪食±ポリスチレンマイクロプラスチック(水に混ぜて給水)を4週間与えたところ、高脂肪食を摂取したマウスにおいて、糖尿病や脂質異常症、脂肪肝がMPにより有意に悪化しました。一方、普通食を摂取したマウスでは明らかな代謝障害は認められませんでした。
○リーキーガット症候群では、小腸のバリア機能が弱まり、小腸内のバクテリアなどの有害物質が体内に侵入することが知られています。本研究でも高脂肪食により発症したリーキーガット症候群により、マイクロプラスチックの小腸粘膜への取り込みが増加し、炎症を起こし、上記の代謝障害の悪化を引き起こすというメカニズムが想定されました。
○本研究の結果は、高脂肪を摂取することにより起きる代謝障害を改善するために、医学的対策だけでなく、マイクロプラスチックの経口曝露を減らす「環境対策」が重要であることを世界で初めて指摘するものです。今回報告された代謝障害をさらに深く評価するために、さらなる臨床研究が必要です。

 

研究概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 病院助教 岡村拓郎、講師 濱口真英、教授 福井道明、京都大学大学院地球環境学堂 教授 高野裕久、京都大学大学院医学研究科 消化器内科学 助教 中西祐貴、教授 妹尾 浩はマイクロプラスチックの経口摂取が代謝障害を悪化させるメカニズムを解明し、本件に関する論文が、科学雑誌『Environmental Health Perspectives』オンライン版に2023年2月22日(水)午後11時(日本時間)に掲載されましたのでお知らせします。
 本研究は、野生型マウスに高脂肪食およびマイクロプラスチックを投与すると腸内細菌叢が乱れ種々の代謝障害を悪化させることを明らかにしました。

論文情報

雑誌名 Environmental Health Perspectives(科学雑誌)
発表媒体 オンライン速報版
オンライン閲覧 可
URL https://ehp.niehs.nih.gov/ehp11072
掲載日 2023年2月22日(日本時間)
論文タイトル Oral exposure to polystyrene microplastics of mice on a normal- or high-fat diet and intestinal and metabolic outcomes
〔日本語:普通食または高脂肪食を摂取させたマウスのポリスチレンマイクロプラスチックの経口曝露と腸および代謝の結果〕
代表著者
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 岡村拓郎
共同著者
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 濱口真英
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 長谷川由佳
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 橋本善隆
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 間嶋紗織
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 千丸貴史
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 牛込恵美
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 中西尚子
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 浅野麻衣
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 山崎真裕
 京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学 福井道明
 株式会社アイスティサイエンス 佐々野僚一
 京都大学大学院医学研究科 消化器内科学 中西祐貴
 京都大学大学院医学研究科 消化器内科学 妹尾 浩
 京都大学大学院 地球環境学堂 高野裕久
 
【用語解説】
  1. マイクロプラスチック:1950年代以降産生され続けたプラスチックの多くは破棄され、海洋プラスチックとして存在している。これに加え近年はpersonal care productやペットボトル水をはじめ、経口的に曝露されるようなMPが増加した。MPによる環境汚染は全球規模で拡大し、その環境影響に加え、ヒトでの健康影響が危惧されている。
  2. リーキーガット症候群:腸は元来ムチン層などの粘膜で覆われて保護されているが、この粘膜が薄くなりバリア機能が低下する。 バリア機能の低下により、本来体内には取り込まないはずの細菌や毒素などの有害物質まで体内に取り込んでしまい、さまざまな症状を引き起こす。
 
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