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【論文掲載】温度環境によって変化する脳の発生メカニズムを解明~リン脂質を介した温度依存的なNotchシグナル制御に関する論文掲載について~

研究の概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科 神経発生生物学 准教授 野村真ら研究グループは、温度環境に依存した脳発生メカニズムの一端を解明し、本件に関する論文が、英国科学雑誌『Nature Communications』に現地時間2022年1月10日付けで掲載されましたのでお知らせします。
 本研究はこれまで知られていなかった、温度変化を感知し神経分化をコントロールする細胞自身の仕組みを明らかにしたものです。胎児が低温環境に置かれると細胞膜の脂質成分が変化し、神経分化を制御するシグナルの活性が変化することを解明しました。また、温度に依存した脳の発生メカニズムが動物種によって異なることも明らかとなり、生物の発生プログラムが低温環境に対する適応機構を独立に進化させたことが示唆されます。本研究成果をもとに、環境温度の変化による胎児の発生への影響や、温度ストレスによる様々な疾病の病態解明、また新たな治療法開発への貢献が期待されます。

研究成果のポイント

・ 卵生動物の神経前駆細胞※1では胎児期に神経分化を調節するシグナル活性が低温で上昇することを発見。
・ 低温環境でのシグナル活性の上昇は細胞膜の脂質成分の変化によることを解明。
・ Notchシグナル※2の温度感受性が動物種によって異なることを発見し、温度変化に応答する脳の発生プログラムの生理学的・進化的意義を解明。

掲載論文情報

論文名:Temperature sensitivity of Notch signaling underlies species-specific developmental plasticity and robustness in amniote brains
(日本語:ノッチシグナルの温度感受性は羊膜類の脳における種特異的な発生可塑性と堅牢性の基盤となる)
雑誌名:Nature Communications
(米国時間:2022年1月10日10時/日本時間:2022年1月10日19時)
雑誌の発行元国:英国
代表著者
京都府立医科大学大学院神経発生生物学 野村真
共同著者
京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻/京都薬科大学薬品物理化学分野 長尾耕治郎
新潟大学 白井遼
京都府立医科大学大学院神経発生生物学 後藤仁志
京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻/ホロバイオ株式会社 梅田眞郷
京都府立医科大学大学院神経発生生物学 小野勝彦
リリース資料はこちら
用語解説
※1神経前駆細胞 胎児期の脳原基に多く存在する細胞で、神経細胞やグリア細胞を生み出す能力を持つ。こうした特性から、マトリックス細胞という名称が藤田晢也・京都府立医科大学名誉教授によって提唱されている。
※2Notchシグナル 細胞の運命決定に働くシグナルの1つで、細胞膜貫通型のNotch受容体によって伝達される。脳神経系の発生期においてNotchシグナルは神経細胞の分化を抑制し神経前駆細胞を維持する機能を持つ。
 

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