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【論文掲載】ミトコンドリア機能不全治療に向けた体細胞におけるミトコンドリアDNA置換技術の開発

 京都府立医科大学大学院医学研究科 人工臓器・心臓移植再生医学講座 及び 循環器内科学らの研究グループは、体細胞において臨床応用可能な手法を用いて、ミトコンドリアDNA(注1)を置換する技術を開発し、本研究に関する論文が2021年5月25日午前10時(英国時間、日本時間:午後5時)に科学雑誌“Scientific Reports”に掲載されましたので、お知らせを致します。
 ミトコンドリアDNAの変異によって起こるミトコンドリア病(注2)は、希少疾患で根治療法はなく進行性の難病であり、治療の開発が切望されていました。本研究は、その原因に直接介入する技術を開発したもので、今後、本技術の臨床応用が期待されます。

研究のポイント

  • 特定の遺伝子配列を認識切断する制限酵素を細胞に導入し、ミトコンドリアDNAを減少させ、外来ミトコンドリアを内在化させる技術を開発した。
  • 本技術により、内在性ミトコンドリアDNAは外来性ミトコンドリアDNAによって置換され、長期間安定して機能することが確認された。
  • ミトコンドリア病患者由来細胞に対し、健常者からの外来ミトコンドリアを用いることで作出されたミトコンドリアDNA置換細胞は、ミトコンドリア病により失われていた呼吸機能・増殖機能を回復した。
  • 外来性ミトコンドリアDNAは細胞内でバクテリア間での水平移行と同様な様式で移動し、外来性ミトコンドリア蛋白成分は分解された。

※注1:ミトコンドリアDNA

 細胞内小器官で唯一遺伝情報を有しているミトコンドリアの内部に存在する環状で16.6 k塩基対の大きさのゲノムです。重要な呼吸鎖構成タンパク質やリボソーマルRNAやトランスファーRNAはミトコンドリアDNAによってコードされています。

※注2:ミトコンドリア病

 ミトコンドリアを構成するタンパク質は核とミトコンドリアDNAにコードされていますが、どちらの変異によってもミトコンドリアの機能異常が生じ、その病態をミトコンドリア病と総称します。その病態は極めて多彩で、今まではミトコンドリア代謝に介入することで病態を改善しようとする試みが行われてきましたが、根治療法の戦略はありませんでした。核にコードされているタンパク質に関しては、遺伝子治療が今後の選択肢になると考えられていますが、ミトコンドリアDNAにコートされているものに関しては選択肢もない状態でした。

論文概要

論文名:
Generation of somatic mitochondrial DNA-replaced cells for mitochondrial dysfunction treatment
邦訳:体細胞ミトコンドリア機能不全に対するミトコンドリアDNA置換細胞の作出
掲載雑誌:
Scientific Reports :2021年5月25日(火)午前10時(英国時間)オンライン速報版
研究グループ
京都府立医科大学 大学院医学研究科
人工臓器・心臓移植再生医学講座 教授 五條理志、講師 上大介
循環器内科学                          研修員 前田英貴、前田遼太朗、大学院生 志熊明
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