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【論文掲載】シフトワーク(交替勤務)に弱い? 明暗シフトによって引き起こる概日リズム障害が 発症しやすい体内時計の特性を発見!~体内時計の特性を加味したシフトの最適化・シフトワーク耐性の予測へ~

本研究成果のポイント

〇野生型マウスを長期にわたる明暗シフト環境により、※1概日リズム障害の代表的病態の一つである※2NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患、以下「脂肪肝」と言う。)の有病率を増加させ、病態に大きな個体差があることを明らかにした
〇概日リズム障害になりやすい体質は、明暗シフト環境前の※3概日リズム特性(行動リズムの周期長および安定性(頑健性))と関連する可能性を示唆
〇個人差がある概日リズムの特性により、シフトワーク耐性や概日リズム障害リスクの予測指標に活用できる可能性がある
 

研究概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 教授 八木田和弘 および 同 講師 小池宣也ら研究グループは、立命館大学 理工学部 機械工学科 教授 徳田 功、テキサス大学 ヘルスサイエンスセンター 教授 Zheng Chen、同 准教授 Seung-Hee Yoo、京都府立医科大学大学院医学研究科 病態分子薬理学 教授 楳村敦詩、大津市民病院 病理診断科 益澤尚子らと共同で、野生型マウスを適応不能な明暗シフト環境の下47週間飼育したところ、概日リズム障害に伴う疾患の一つとして知られる脂肪肝の発症が顕著に増加すること、同じ明暗シフト環境にもかかわらず脂肪肝の病態には大きな個体差があることを明らかにしました。さらに、脂肪肝の発症しやすさは、明暗シフト開始前の各マウスが示す概日リズム特性の個体差(行動リズム周期やリズム安定性など、※4体内時計の体質)と関連することがわかりました。
 適応力に個人差があるシフトワーク(交代勤務)は、概日リズム障害に伴う疾患の対策が困難になる原因の一つでした。本研究の結果は、人それぞれが持つ概日リズム特性を指標として活用することで、概日リズム障害のリスク予測とその低減法の構築につながる可能性を示します。
 本研究成果は、2024年2月6日(火)午前1時(日本時間)国際学術雑誌「iScience」(Cell Press)オンライン版に公表されましたのでお知らせします。
<用語説明>
※1概日リズム障害:Circadian Rhythm Disorders。シフトワーク障害(Shiftwork Disorders)も概日リズム障害の一種。本来、体内時計は外界の明暗周期に生体を適応させる機能があり、特に光環境に合わせて柔軟に同調する特性(同調性)を持っています。概日リズム障害は、睡眠障害のみならず、免疫機能低下、メタボリックシンドローム、糖尿病、心血管疾患、月経不順・不妊症、炎症性腸疾患の増悪、などのリスクとなるため、全身性の疾患です。また、WHOによって深夜勤務を含むシフトワーク(Night Shiftwork)は、おそらく発がん性があるリスク因子として認定されています。これらも含め、概日リズム障害は広く個体機能の恒常性破綻状態と捉えるべき病態です。
※2NAFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-Alcoholic Fatty Liver Diseases)の略称。アルコールやウイルスなどを原因としない脂肪肝・脂肪肝炎等の総称。メタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病において肝臓に見られる表原型。特に、線維化を伴う慢性炎症の状態に進行したものをNASH (Non-Alcoholic Steato-Hepatitis;非アルコール性脂肪肝炎)と呼び、肝硬変や肝細胞癌へ進行するリスクがある病態として注目されています。
※3概日リズム:サーカディアン・リズム(Circadian Rhythm)とも呼ばれる約1日周期の生体リズム。行動リズムや睡眠覚醒リズム、自律神経リズム、ホルモン分泌リズム、体温リズム、代謝リズム、など多くの生理機能に見られる約1日周期のリズム現象を指す用語。概日リズムを生み出す仕組み(メカニズム)が体内時計(概日時計)です。
※4体内時計:概日時計(Circadian Clock)や生物時計(Biological Clock)とも呼ばれるほとんどの生物に備わる1日を測る計時機構。地球の自転周期に伴う環境サイクルに生体を同調させる仕組みとして進化の過程で獲得したと考えられています。ヒトを含む哺乳類では、脳の視床下部にある視交叉上核(Suprachiasmatic Nucleus:SCN)が中枢時計として全身の細胞に備わる体内時計(末梢時計)を同調させ、さまざまな生理機能の概日リズムの調節を司っています。
 

論文情報

雑誌名 iScience
発表媒体 オンライン速報版 
オンライン閲覧 可 https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(24)00155-X
掲載日 2024年2月6日(日本時間)
論文タイトル(英・日)
 Inter-individual variations in circadian misalignment-induced NAFLD pathophysiology in mice(概日リズム不適合が引き起こすNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)の病態生理に見られる個体差)
代表著者
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 八木田和弘
筆頭著者
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 小池宣也
共同著者 
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 梅村康浩
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 井之川仁
              (現 中国学園大学 栄養学部)
 立命館大学 理工学部 機械工学科 徳田 功
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 土谷佳樹
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 笹脇ゆふ
 京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器内科学 楳村敦詩
  (現 京都府立医科大学大学院医学研究科 病態分子薬理学)
 大津市民病院 病理診断科 益澤尚子
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 藪本和也
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 瀬谷 崇
 京都府立医科大学大学院医学研究科 統合生理学 杉本 暁
 テキサス大学ヘルスサイエンスセンター Zheng Chen
 テキサス大学ヘルスサイエンスセンター  Seung-Hee Yoo
 
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