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【論文掲載】乳酸の代謝を促進する分子を発見~高濃度の乳酸を代謝するメカニズムが明らかに~

京都府立医科大学大学院医学研究科生体構造科学助教谷田任司,准教授松田賢一,教授田中雅樹らの研究グループは,乳酸に反応して細胞質から核へと移行する分子「LRPGC1」を同定し,この分子が乳酸存在下でミトコンドリアを活性化することで乳酸代謝を促進することを発見しました。本件に関する論文が米国科学雑誌『The FASEB Journal』に2020年8月26日(米国東部時間)付けで掲載されました。
過度な運動や代謝不全,悪性腫瘍,虚血などにより解糖によって生成された乳酸は大部分が肝臓によって代謝されますが,高濃度に蓄積された乳酸がどのように遺伝子発現を活性化させ,乳酸代謝が促進されるかについての分子メカニズムはよく分かっていませんでした。乳酸の蓄積は致死性の乳酸アシドーシスを引き起こす可能性があるため,乳酸代謝の分子メカニズムの解明は臨床的にも重要視されています。
今回研究グループはLRPGC1を同定,その細胞内局在を詳細に調べることで乳酸によって核移行するという特性を見出し,遺伝子ノックアウト細胞やモデルマウスなどを用いて乳酸代謝を促進するというLRPGC1の機能を突き止めました。この研究成果により,乳酸が蓄積した際それに反応して遺伝子発現が活性化する仕組みが明らかとなり,乳酸アシドーシスの病態解明と新たな治療法の開発に繋がることが期待されます。
 

本研究成果のポイント

〇乳酸に反応して細胞質から核へと移行する分子「LRPGC1」を同定。
〇LRPGC1は乳酸存在下で転写因子ERRγと相互作用し,ミトコンドリアの活性化とそれによる乳酸代謝の促進を引き起こす。
〇薬剤によりLRPGC1/ERRγシグナルを活性化すると乳酸アシドーシスモデルマウスの生存率が顕著に上昇した。
 

発表基礎情報

雑誌名:The FASEB Journal
オンライン閲覧:https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1096/fj.202000492R
論文タイトル:(英)Novel metabolic system for lactic acid via LRPGC1/ERRγ signaling pathway
       (日)LRPGC1/ERRγシグナル経路を介した新規乳酸代謝システム
代表著者:京都府立医科大学 大学院医学研究科 生体構造科学 谷田任司 助教
共同著者:京都府立医科大学 大学院医学研究科 生体構造科学 松田賢一 准教授
     京都府立医科大学 大学院医学研究科 生体構造科学 田中雅樹 教授
 
本研究は以下の研究費の支援を受けて行われました。
日本学術振興会 科学研究費補助金
若手研究(B)24791116,26860852(谷田任司)
基盤研究(C)17K10188,20K08186(谷田任司)
 
 
プレスリリース資料は こちら

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