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【論文掲載】抗精神病薬の多剤併用は精神科入院患者の薬剤性有害事象の発生を増加させる~抗精神病薬多剤併用と薬剤性有害事象の関連に関する論文掲載について~

本研究成果のポイント

  • 統合失調症をはじめ幅広い精神疾患の治療に用いられる抗精神病薬は、2剤以上の併用(以下、多剤併用)により様々な薬剤性有害事象(薬剤使用に伴う健康被害。以下、ADE)と関連すると言われてきたが、診療記録を元にした実証的調査での関連は明らかではなかった。
  • 精神科入院患者の診療記録を元に、抗精神病薬の多剤併用とADEとの関連について調査を行った結果、多剤併用群では、ADEを1回以上起こす頻度が約1.5倍、2回以上起こす頻度が約2倍に増加していた。
  • 本調査は確立された方法論を用いて診療記録を網羅的に調べることで、幅広いADEについて抗精神病薬の多剤併用との関連を実証的に明らかにした点で意義がある。

研究の概要

 独立行政法人国立病院機構 舞鶴医療センター 臨床研究部 精神医学・臨床疫学研究室室長であり、本学大学院医学研究科精神機能病態学 客員講師の綾仁信貴らの研究グループは、精神科入院患者における抗精神病薬(主に統合失調症の治療に用いられるドパミンの活動を抑制する作用のある薬剤)の多剤併用(2剤以上の併用)が、単回および複数回の薬剤性有害事象(Adverse Drug Event:薬剤使用に伴う健康被害, 以下ADE)の発生に影響していることを明らかにし、本件に関する論文が米国精神医学雑誌「Journal of Clinical Psychopharmacology」(2021年7/8月号)に掲載されることになりました。本研究は本学大学院医学研究科精神機能病態学 成本迅教授、兵庫医科大学臨床疫学 森本剛教授および作間未織講師、慶應義塾大学医学部精神・神経学教室 菊地俊暁講師、杏林大学医学部精神神経科学教室 渡邊衡一郎教授と共同で行ったものです。
 本研究は、JADE-Study(日本薬剤性有害事象研究)の一環として精神科病棟に入院した全ての患者を対象に行われた研究(JADE-Study for Psychiatry)から得られた情報のうち、ADEに関する情報、処方薬剤情報および患者背景情報を用いて行われ、抗精神病薬の多剤併用とADEの発生との関連について調査されました。解析の結果、抗精神病薬の多剤併用を受けている患者では、それ以外の患者と比べ、ADEを1回以上起こす頻度が約1.5倍、2回以上起こす頻度が約2倍に増加していることが明らかになりました。抗精神病薬は統合失調症をはじめ幅広い精神疾患や精神症状の治療に用いられていますが、本研究により抗精神病薬の多剤併用とADEの関連が実証的に明らかにされたことは、今後の精神科診療における抗精神病薬の多剤併用に対する注意喚起となり、精神科医療における安全性と質の向上に寄与することが期待されます。
 

論文情報

論文タイトル:Antipsychotic Polypharmacy Is Associated With Adverse Drug Events in Psychiatric Inpatients: The Japan Adverse Drug Events Study (精神科入院患者において抗精神病薬多剤併用は薬剤性有害事象と関連する)
雑誌名:Journal of Clinical Psychopharmacology(オンライン速報版)
オンライン閲覧 可(URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34108429/#
掲載日 2021年07月(オンライン速報版:6月8日掲載)
 
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