テキストサイズ

  • テキストサイズ 中
  • テキストサイズ 大

JP

検索

EN

Menu

閉じる

《論文掲載》ベンゾジアゼピン系受容体作動薬の急な中止は術後せん妄を増加させる

京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学 大道智恵大学院生、成本迅教授、同附属病院医療安全管理部 田中真紀看護師、独立行政法人国立病院機構 舞鶴医療センター 精神科 綾仁信貴らの研究グループは、兵庫医科大学臨床疫学 森本剛教授、滋賀医科大学睡眠行動医学講座 角谷寛特任教授の協力のもと、睡眠薬として広く使用されているベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZDRA)を手術の際に急に中止すると高頻度で術後せん妄を発症することを報告し、本件に関する論文が、科学雑誌『Comprehensive Psychiatry』(2021年1月)に掲載されましたのでお知らせします。
本研究は、京都府立医科大学附属病院精神科リエゾンチーム(用語1)に紹介された周術期の症例を対象に行われた後方視的コホート研究(用語2)であり、解析の結果、BZDRAが術後中止された症例では術後せん妄の発症率が高いことが示されました。本研究成果は、臨床現場において、BZDRAの周術期の急な中止に対して注意喚起をするとともに、日常臨床におけるBZDRAの漫然とした使用を避けるように促すエビデンスとなることが期待されます。

本研究成果のポイント

  • 京都府立医科大学附属病院精神科リエゾンチーム(用語1)に紹介され、附属病院で手術を受けた患者の周術期におけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZDRA)の使用および中断による術後せん妄への影響を後方視的に調査
  • 周術期のBZDRA使用状況により「継続投与群」「中止群」「新規投与群」「無投与群」に分類すると、「中止群」で有意にせん妄発症率が高かった
  • 周術期のBZDRA使用は避けることが推奨されているが、急な中止は術後せん妄のリスクファクターとなることを示した

論文基礎情報

論文タイトル: 
Association between discontinuation of benzodiazepine receptor agonists and post-operative delirium among inpatients with liaison intervention: A retrospective cohort study
(和名:リエゾン介入におけるベンゾジアゼピン受容体作動薬の内服中止と術後せん妄の関連)
掲載雑誌:Comprehensive Psychiatry
代表著者 京都府立医科大学大学院精神機能病態学 大道智恵
独立行政法人国立病院機構 舞鶴医療センター 精神科 綾仁信貴
共同著者 京都府立医科大学大学院精神機能病態学 大矢希
京都府立医科大学大学院精神機能病態学 松本佳大
京都府立医科大学附属病院医療安全管理部 田中真紀
兵庫医科大学臨床疫学 森本剛
滋賀医科大学睡眠行動医学講座 角谷寛
京都府立医科大学大学院精神機能病態学 成本迅
プレスリリース資料はこちら
・用語1:精神科リエゾンチーム:
リエゾンとはフランス語で「連携」「連絡係」を意味し、本学附属病院精神科リエゾンチームは精神科医師、専門看護師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーなど多職種が連携して、身体疾患に伴う心理的問題への介入を行うために、形成されたチームです。当チームでは年間約600件の新規依頼を受け、2018年の依頼内訳は、せん妄対応が39%、術後の精神状態管理目的の予防的介入が16%、うつ状態の対応が13%、不眠症対応が11%となっています。
・用語2:後方視的コホート研究
コホート研究とは、研究対象者が特定の因子(本研究では術前後のBZDRAの投与有無)への曝露が、一定期間でどのようなアウトカム(本研究ではせん妄発症)を生じるか観察する研究のこと。後方視的コホート研究とは、本研究のように曝露情報が過去に明らかになっており、現在から遡って曝露の違いによるアウトカムを調査するものを言います。
・用語3:ベンゾジアゼピン離脱症候群
BZDRAを長期間使用したことで身体依存が形成された後、BZDRAを減量あるいは中止することによって生じる、睡眠障害や易刺激性、不安と緊張の増加や、手の震え、集中力低下、けいれん、幻覚などの様々な薬物離脱症状。症状の程度は、BZDRAの使用量や使用期間、薬剤の種類によって様々で、個人差も大きい。

〒602-8566. 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465

お問い合わせ先
TEL:075-251-5111
FAX:075-211-7093