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【論文掲載】新型コロナウイルス感染症が高齢者で重症化する新しい仕組みを発見 〜血管の老化が鍵〜

本研究成果のポイント

○新型コロナウイルスがエンドサイトーシスを介して血管内皮細胞に感染することを明らかにしました。
○老化した血管内皮細胞は若い血管内皮細胞と比べて新型コロナウイルスに非常に感染しやすく、感染早期の段階では若い内皮細胞に比べて800倍も多いウイルスが細胞内に侵入していることがわかりました。
○老化血管内皮細胞ではカベオラを利用したエンドサイトーシスによって、より多くのウイルスが細胞内に侵入することが示唆されました。
○新型コロナウイルスに感染した血管内皮細胞ではウイルスが消失した後も広範な遺伝子の発現が変動しており、特に老化血管内皮細胞ではその影響が大きく、血栓の形成に関する多くの分子の発現がウィルス感染により変動することがわかりました。

研究概要

 京都府立医科大学 長寿・地域疫学講座 池田宏二 教授 および 京都府立医科大学 大学院医学研究科 循環器内科学 的場聖明 教授ら研究グループは、新型コロナウイルスが血管内皮細胞(用語解説1)に感染すること、そして血管内皮細胞が老化すると非常にウィルスに感染しやすくなり、感染による悪影響をより強く受けることを発見しました。新型コロナウイルスは血管内皮細胞に感染する際、エンドサイトーシス(用語解説2)を介して細胞内に侵入し、特に老化血管内皮細胞では細胞表面の窪みであるカベオラ(用語解説3)を利用してより多くのウイルスが細胞内に侵入することを見出しました。新型コロナウイルスに感染した血管内皮細胞ではウイルスが細胞内から消失した後も多くの遺伝子発現に影響が及んでいることがわかりました。その影響は老化血管内皮細胞でより大きく、特に血栓の形成に関与する分子の遺伝子発現が強い影響を受けることがわかりました。
 この論文が国際学術雑誌「Scientific Reports」7月25日付オンライン版に掲載されましたので、報告いたします。
 
【用語解説】
(1)血管内皮細胞
全身の全ての血管の内側は一層の血管内皮細胞で覆われています。血球を除くと、血管内皮細胞は血液と直接接触する唯一の細胞と言うことができます。血管内皮細胞は血液が凝固しない(血栓ができない)よう、多くの抗凝固・抗血栓因子を合成・分泌し、血液の流動性を維持するのに必須の役割を果たしています。従って、血管内皮細胞の機能異常は血栓形成を引き起こす直接的な原因となります。
(2)エンドサイトーシス
細胞が細胞外の物質を細胞内に取り込む過程の1つです。ある物質が細胞表面に結合するとその部分の細胞膜が深い窪みを作って細胞の中に陥入し、物質は細胞膜に包まれた状態(エンドソーム)で細胞内に取り込まれます。この一連の過程をエンドサイトーシスと呼びます。
(3)カベオラ
カベオラは細胞表目の膜の窪みで50-100 nmの内腔を持つ丸フラスコ状の構造です。血管内皮細胞は多くのカベオラを細胞表面に有しています。カベオラには様々な受容体や膜タンパクが存在し、細胞にシグナルを伝達する際に重要な役割を果たしています。また一部の病原体は細胞内に侵入する際にカベオラを利用することが知られていますが、新型コロナウイルスの感染にカベオラが利用されているかどうかはわかっていませんでした。 

論文情報

雑誌名 Scientific Reports(国際学術誌) 
発表媒体 オンライン版
オンライン閲覧 可
URL https://doi.org/10.1038/s41598-022-15976-z
掲載日 2022年7月25日(月)午後6時(日本時間)
論文タイトル Senescent endothelial cells are predisposed to SARS-CoV-2 infection and subsequent endothelial dysfunction
〔日本語:血管内皮細胞の老化は新型コロナウイルス感染と血管内皮障害を増悪する〕
 
代表著者
 京都府立医科大学 長寿・地域疫学講座 池田宏二 

筆頭著者
 京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器内科学 的場聖明


プレスリリース資料はこちら (添付資料:概略図)

 

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