テキストサイズ

  • テキストサイズ 中
  • テキストサイズ 大

JP

検索

EN

Menu

閉じる

【論文掲載】免疫アレルギー領域の日本、欧米の研究助成インパクトの長期的・社会的特徴が明らかに~「厚み」指標と自然言語解析を用いたアレルギー領域での世界初の研究結果~

本研究成果のポイント

  • 日欧米の免疫アレルギー領域の研究助成プログラムの成果の研究インパクト解析(注1)を実施し、日本の研究成果論文は量や「研究の厚み(注2)」がある一方で、欧米の研究成果論文の質や国際共同研究率が高いこと、日本の研究助成プログラムの成果は公共・メディア等へ届いているもののオープンアクセス(学術論文の無料公開:注3)の割合が低い一方で、欧米の成果は幅広い層に届いていたことが明らかになりました。
     
  • また、アレルギー疾患対策基本法に基づき、厚生労働省が推進する「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略(注4)」に関連し、どのような特徴の研究成果が生み出されているかを、論文概要の「自然言語解析(注5)」等を行い、いくつかのグループに分けて比較したところ、日本からはアレルギーの臨床研究や、精密医療(注6)、微生物叢(注7)などの外的因子、さらに幼少児に関連した研究成果が多く生み出されていることもわかりました。
     
  • これまで研究助成成果の評価には、被引用数等の一部の単一指標が画一的に用いられ、あるいはインパクト・ファクター(注8)のような雑誌評価指数が誤用されてきましたが、本研究成果をもとに確立された多様な視点による解析基盤によって、効果的な国際共同研究や長期的な研究戦略の策定への貢献が期待されます。

研究概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科医療レギュラトリーサイエンス学の足立剛也特任講師、名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部の小川靖講師、名古屋大学情報学研究科の平子潤大学院生、自然科学研究機構の小泉周特任教授、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの鳥谷真佐子特任教授らの研究グループは、免疫アレルギー領域の国際的な研究助成プログラムの成果の研究インパクト解析を行いました。
 本研究では、免疫アレルギー領域で初めて、研究助成の成果を国際的・多元的に比較し、日本と欧米の研究成果について、論文の量や質だけでなく「研究の厚み」や、アカデミア・メディア・患者・学生など幅広い層に届いているかを評価しました。また、どのような特徴の研究成果が生み出されているかを把握するため、論文概要の「自然言語解析」等を実施し、日本の研究助成プログラム成果の強みと弱みを明らかにしました。
 本件に関する論文は、科学雑誌『Allergy』に日本時間2022年2月18日付けで掲載されました。

論文情報

雑誌名 Allergy (European Journal of Allergy and Clinical Immunology)
発表媒体 ■ オンライン速報版 □ ペーパー発行 □ その他
雑誌の発行元国 欧州
オンライン閲覧 可 (URL)https://doi.org/10.1111/all.15249
掲載日 日本時間2022年2月18日(校正速報版2月10日掲載)
論文タイトル(英・日)
Research impact analysis of international funding agencies in the realm of allergy and immunology・免疫アレルギー領域の国際研究助成機関の研究インパクト解析
 
代表著者
京都府立医科大学大学院医学研究科医療レギュラトリーサイエンス学・足立剛也特任講師
筆頭著者
名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部・小川靖講師
共同著者
国立研究開発法人日本医療研究開発機構・福士珠美主幹
アクセンチュア株式会社・伊藤慶
自然科学研究機構・小泉周特任教授
東京工業大学・調麻佐志教授
慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート・鳥谷真佐子特任教授
名古屋大学大学院情報学研究科・平子潤大学院生
順天堂大学医学部眼科学講座・猪俣武範准教授
慶應義塾大学医学部呼吸器内科学教室・正木克宜助教
名古屋大学大学院情報学研究科・笹野遼平准教授
国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部・佐藤さくら室長
国立病院機構三重病院・貝沼圭吾客員研究員
国立病院機構名古屋医療センター小児科・二村昌樹医長
九州大学病院呼吸器科・神尾敬子医員
東京大学医科学研究所/千葉大学大学院医学研究院・倉島洋介准教授
京都大学大学院医学研究科炎症性皮膚疾患創薬講座・中島沙恵子特定准教授
福井大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学/医学研究支援センター・坂下雅文講師
国立成育医療研究センター免疫アレルギー・感染研究部・森田英明室長
国立研究開発法人日本医療研究開発機構・岩本愛吉理事長特任補佐/研究開発統括推進室長
国立病院機構福岡病院・西間三馨名誉院長
東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター分子遺伝学研究部・玉利真由美教授
医療法人社団廣仁会札幌乾癬研究所・飯塚一所長
 
プレスリリース資料はこちら
【用語解説】
(注1)研究インパクト解析:研究の結果がもたらすインパクト(影響度) を評価するための解析。研究成果が学術界に直接及ぼす科学的影響だけでなく、近年では幅広い層に対する社会的影響なども統合的に解析することが期待されている。
(注2)研究の厚み(厚み指標):研究グループや組織などで発表された論文などの研究成果について、「一定以上の質が伴うものの量」を指す言葉。単なる量(論文数など)、または質(被引用数を用いた指標)で評価するのではなく、その組み合わせで研究力を測定する概念。たとえば、Top10%論文数(被引用数トップ10%に入るという「質」を伴う論文の「量」(論文数))やh5-index(5年の期間において被引用数がh回以上ある論文がh本以上ある場合、そのhの数)がそれにあたる。
(注3)オープンアクセス:学術論文を含む研究成果をインターネット等を通じて公開し、誰もが無料で閲覧可能な状態に置くこと。
(注4)免疫アレルギー疾患研究10か年戦略:アレルギー疾患対策基本法、アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針に基づき、免疫アレルギー疾患領域における研究の現状を正確に把握し、疫学調査、基礎病態解明、治療開発、臨床研究等を長期的かつ戦略的に推進するために策定された。我が国全体で進める免疫アレルギー研究の今後のあるべき方向性と具体的な研究事項を示している。
(注5)自然言語解析:人の話し言葉や書き言葉が持つ意味をコンピュータ・AIが分析する一連の処理のこと。自然言語処理(Natural Language Processing: NLP)とも言う。
(注6)精密医療:少数の集団にあわせたある疾患に属する患者を、いくつかの集団に分類し、各集団に適した治療法を選択することを目的とした医療のこと。層別化医療とも言う。
(注7)微生物叢:生態系における微生物の集合。消化器、皮膚、口腔、鼻腔、呼吸器、生殖器等の人体が外部環境と接するあらゆるところに、細菌や真菌、ウィルス等の様々な微生物が生息しており、それぞれ特有な微生物叢を形成している。近年、この微生物叢が多くの疾患や病態において健常者と異なることが明らかとなり、微生物叢が私たちの健康や疾患に深く関与していることが示唆されている。
(注8)インパクト・ファクター:ジャーナル(学術雑誌)の影響度を評価する雑誌評価指標。被引用数をもととして雑誌の影響度を数値化する。あくまでも雑誌の評価指標であり、個々の研究論文や研究者を評価する指標ではない。

〒602-8566. 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465

お問い合わせ先
TEL:075-251-5111
FAX:075-211-7093