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【論文掲載】改変した『ゲノム編集のための最小のはさみ』

本研究成果のポイント

○CRISPR-Cas12酵素の中で最小のAsCas12fの立体構造を決定した。
○Deep mutational scanning(DMS)というスクリーニング手法をCRISPR-Cas酵素に世界で初めて適用した。
○DMSと構造情報に基づく合理的な改変によって、ゲノム編集活性を高めた改変型AsCas12fの作製に成功した。

研究概要

 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻の大村紗登士大学院生、中川綾哉大学院生、濡木理教授らは、クライオ電子顕微鏡(注1)を用いて、V型CRISPR-Cas酵素(注2)として最小の大きさのAsCas12fの立体構造を決定しました。
 また、京都府立医科大学の日野智博後期専攻医、星野温講師、的場聖明教授、自治医科大学の冨樫朋貴大学院生、大森司教授らと共同で、Deep mutational scanning(DMS)(注3)を用いた変異体スクリーニングと得られた構造情報に基づいた合理的なAsCas12fの改変を行い、野生型と比べてはるかにゲノム編集活性の高い改変型AsCas12fを作製しました。
 今回開発された2種類のAsCas12f改変体は、搭載可能な遺伝子の大きさに制限のあるウイルスベクター(注4)に余裕をもって搭載可能であるため、ウイルスベクターを利用した遺伝子治療のための革新的なゲノム編集ツールとなることが期待されます。
 

論文情報

雑誌名 Cell 
発表媒体 オンライン速報版 
オンライン閲覧 可 https://doi.org/10.1016/j.cell.2023.08.031
掲載日 2023年9月29日(現地時間)
論文タイトル(英・日)
An AsCas12f-based compact genome editing tool derived by deep mutational scanning and structural analysis
改変した『ゲノム編集のための最小のはさみ』
筆頭著者
   京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器内科学 日野智博
 東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 大村紗登士
 東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 中川綾哉
 自治医科大学 医学部生化学講座 病態生化学部門 冨樫朋貴
責任著者 
   東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 濡木 理
 京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器内科学 星野 温
 自治医科大学 医学部生化学講座 病態生化学部門 大森 司
 
(注1)クライオ電子顕微鏡
液体窒素(-196度)冷却下でタンパク質などの分子に対して電子線を照射し、試料の観察を行うための装置。タンパク質や核酸の立体構造の決定に利用されている。
(注2)CRISPR-Cas酵素

原核生物のもつCRISPR-Cas獲得免疫システムにおいて外来核酸の分解を担う酵素。CRISPR-Cas酵素は6つのタイプ(I–VI型)に分類される。II型CRISPR-Cas酵素Cas9やV型CRISPR-Cas酵素Cas12はガイドRNAと複合体を形成し、ガイドRNAと相補的な2本鎖DNAを特異的に切断する。
(注3)Deep mutational scanning(DMS)

培養細胞系を用いた変異体スクリーニング手法。標的タンパク質の各アミノ酸残基をそれぞれ20種類のアミノ酸に変異させた際の活性変化を網羅的に調べることができる。
(注4)ウイルスベクター

目的遺伝子を標的細胞に導入するために利用されるウイルス。アデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターを用いることにより、Cas酵素やgRNAを目的の組織に導入することができる。
 
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