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【論文掲載】ヒトの皮膚上に存在する新型コロナウイルスの生存期間を解明

 京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器内科学 廣瀬亮平助教、内藤裕二准教授、伊藤義人教授、法医学 池谷博教授、感染病態学 中屋隆明教授ら研究グループは、新型コロナウイルスがインフルエンザウイルスに比してヒト皮膚上で長期間生存することを明らかにしました。本研究に関する論文が現地時間2020年10月3日(土)に科学雑誌「Clinical Infectious Diseases」に掲載されましたのでお知らせします。本研究で明らかにされたヒト皮膚上での生存時間は、新型コロナウイルスによる接触感染のリスクを有する具体的な期間や感染経路の特定に役立ち、今後の感染制御の発展に大いに貢献します。

本研究成果のポイント

●ヒト皮膚表面上の新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの生存時間は、ステンレススチール・耐熱ガラス・ポリスチレンの表面の生存時間より大幅に短くなり、ヒト皮膚の表面はウイルスの生存には不向きであることが明らかになった。
●新型コロナウイルスは皮膚表面上で9時間程度生存し、1.8時間程度で不活化されるインフルエンザウイルスに比して大幅に生存時間が長くなった。
●皮膚表面上の新型コロナウイルスは、80%エタノールによる15秒間の消毒にて完全に不活化され、新型コロナウイルスに対する手指衛生の重要性を実証した。
 

研究概要

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大の重大な要因となっている接触感染はヒトの手指などの皮膚を介してのウイルス運搬および体内への侵入により成立します。そのため、ヒト皮膚表面上のウイルスの安定性(生存時間)を明らかにすることは、SARS-CoV-2の接触感染のリスク評価およびより有効な感染制御方法の構築に極めて重要です。
 しかし、SARS-CoV-2のような危険性の高い病原体を被験者(研究ボランティア)の皮膚に塗布して研究を行う事は、被験者に危険が及ぶため施行が難しいのが現状です。そこで廣瀬らは法医解剖検体から採取した皮膚を用いた病原体安定性評価モデルを構築しました。さらにこの評価モデルが実際の被験者の皮膚上での安定性評価を正確に再現していることを確認しました。その上で、その評価モデルを使用しSARS-CoV-2とインフルエンザA型ウイルス(IAV)の皮膚上での安定性およびエタノール系消毒薬の有効性を評価しました。
 最初に、SARS-CoV-2とIAVと細胞培養培地の混合物を様々な物体の表面上に塗布して安定性を評価しました。SARS-CoV-2のステンレススチール・耐熱ガラス・プラスチック(ポリスチレン)の表面上での生存時間はIAVより8倍程度長く、高い安定性を示しました。このことは以前の研究データとも一致していました。一方で、皮膚上のSARS-CoV-2とIAVの生存時間は、ステンレススチール・耐熱ガラス・プラスチックの表面より大幅に短くなり、ヒト皮膚表面はウイルスの生存には不向きであることが示されました。ヒト皮膚表面はウイルス生存には不向きではあるものの、皮膚表面上のSARS-CoV-2は9時間程度生存し続け、1.8時間程度で不活化されるIAVに比して大幅に生存時間は長くなりました。このようにSARS-CoV-2はIAVに比してヒト皮膚上での安定性が高いため、IAVに比して接触感染による感染拡大のリスクが高いことが示されました。
 次に、皮膚上のSARS-CoV-2とIAVに対する80%w/wエタノールの消毒効果評価を行いました。粘液/培地中のSARS-CoV-2およびIAVは、80%エタノールの15秒間の暴露にて完全に不活化されました。エタノール消毒薬を使用した手指衛生は、本来9時間程度続くSARS-CoV-2の接触伝播のリスクを速やかに低下させる事ができ、感染制御上きわめて効果的であることが示されました。
 本研究はSARS-CoV-2のパンデミック終息および第二・第三波の感染拡大予防に貢献します。さらに我々の考案した剖検体皮膚を用いた病原体安定性評価モデルは、SARS-Cov-2以外の危険性の高い高病原性・高伝染性病原体(ウイルス・細菌)のヒト皮膚表面上での安定性や消毒薬効果の評価を実現し、今後の感染制御の発展に大いに貢献します。

発表基礎情報

掲載雑誌:Clinical Infectious Diseases [現地時間2020年10月03日(土)公開]
論文タイトル:Survival of SARS-CoV-2 and influenza virus on the human skin: Importance of hand hygiene in COVID-19
[日本語:ヒトの皮膚上に存在する新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの生存評価:COVID-19における手指衛生の重要性]
筆頭・責任著者:京都府立医科大学 大学院医学研究科 消化器内科 廣瀬 亮平 助教
共同著者:京都府立医科大学 大学院医学研究科 法医学 池谷 博 教授
     京都府立医科大学 大学院医学研究科 消化器内科 内藤 裕二 准教授
     京都府立医科大学 大学院医学研究科 消化器内科 伊藤 義人 教授
     京都府立医科大学 大学院医学研究科 感染病態学 中屋 隆明 教授
 
本研究は以下の研究費の支援を受けて行われました。
・国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(20fk0108077h0003) 
・JSPS 科研費(JP18K16183 and JP18H03040)
・公益財団法人持田記念医学薬学振興財団
・公益財団法人上原記念生命科学財団
・公益財団法人金原一郎記念医学医療振興財団
・公益社団法人武田科学振興財団
・公益財団法人大和証券ヘルス財団
プレスリリース資料(研究内容の詳細)はこちら
 

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