テキストサイズ

  • テキストサイズ 中
  • テキストサイズ 大

JP

検索

EN

Menu

閉じる

【論文掲載】高親和性ACE2製剤はオミクロン株にも有効 新たな変異株や将来のパンデミックにも効果が期待される

 京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学 星野温 講師、大阪大学蛋白質研究所 高木淳一 教授、高等共創研究院 岡本徹 教授(微生物病研究所、感染症総合教育研究拠点兼任)、微生物病研究所 ダロン・スタンドレー 教授(感染症総合教育研究拠点兼任)らの研究グループは現在開発中である高親和性ACE2製剤がオミクロン株(BA.1, BA.2)に対しても有効であることを確認し、本研究成果は、2022年4月26日に米国科学雑誌Science Translational Medicine誌に掲載されましたので、お知らせします。
 現在問題となっているオミクロン株は既に報告されている通り、ワクチンや多くの中和抗体製剤に対して逃避性を示し、これらの有効性は大きく低下しています。本研究では、ワクチン接種者やアルファ株、デルタ株感染者の血清では中和活性が約20倍低下し、カシリビマブとイムデビマブのカクテル抗体製剤も中和活性を喪失していることを確認しました。一方、現在開発に取り組んでいる逃避変異が出現しにくい高親和性ACE2製剤はオミクロン株に対しても有効で、さらに将来のパンデミックの原因となりうるコウモリなどに感染するコロナウイルスにも効果があることを確認しました。この高親和性ACE2製剤はBA.2 系統を含むオミクロン株だけでなく、新たな変異株や将来のコロナウイルスパンデミックに対しても有効であることが期待されます。
 

 研究成果のポイント

・ワクチン(BNT162b2)2回接種によるオミクロン株に対する中和活性は、武漢株に対する中和活性と比較して約18分の1、アルファ株やデルタ株の感染者では10-20分の1低下していました。
・オミクロン株は感染に重要な表面のスパイクタンパクに30個程度の変異がありますが、細胞表面の感染受容体であるACE2と直接結合する領域だけでなく、N末端領域における変異も逃避性に関与していました。
・オミクロン株(BA.1)に対する中和活性は、現在日本で承認されている治療薬であるソトロビマブでは維持されていましたが、カシリビマブ・イムデビマブのカクテル抗体製剤では消失していました。一方、我々が開発に取り組んでいる高親和性ACE2製剤はオミクロン株(BA.1)とその亜型であるBA.2に対しても有効でした。
・高親和性ACE2製剤は主要な変異株に対して有効性を確認しているだけでなく、将来のパンデミックの原因となりうるコウモリやセンザンコウを宿主とする他のコロナウイルスに対しても有効性を示しました。
・スパイクタンパク質の全1アミノ酸変異を網羅したライブラリでの検討では、従来の中和抗体製剤と異なり、高親和性ACE2製剤では中和活性が失われるアミノ酸変異は認められませんでした。そのため、変異が高頻度に生じるウイルス治療薬において高親和性ACE2製剤は抗体製剤より優れた治療薬モダリティであることが示唆されました。

論文概要

論文名:An engineered ACE2 decoy neutralizes the SARS-CoV-2 Omicron variant and confers protection against infection in vivo
「改変ACE2受容体は免疫逃避性を示すオミクロン株も中和する」
著者:Nariko Ikemura*, Shunta Taminishi*, Tohru Inaba*, Takao Arimori*, Daisuke Motooka*, Kazutaka Katoh*, Yuhei Kirita, Yusuke Higuchi, Songling Li, Tatsuya Suzuki, Yumi Itoh, Yuki Ozaki, Shota Nakamura, Satoaki Matoba, Daron M Standley†, Toru Okamoto†, Junichi Takagi†, Atsushi Hoshino†
†責任著者:星野 温、高木 淳一、岡本 徹、ダロン・スタンドレー
掲載雑誌:Science Translational Medicine  4月26日オンライン掲載
DOI: 10.1126/scitranslmed.abn7737
オンライン掲載URL: http://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.abn7737
 
プレスリリース資料はこちら

〒602-8566. 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465

お問い合わせ先
TEL:075-251-5111
FAX:075-211-7093