京都府立医科大学：【論文掲載】新型コロナウイルス感染症による肺傷害をＣＴ無しで予測する～高精度な診断、SF比とLD濃度～

本研究成果のポイント

○新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による急性低酸素性呼吸不全(AHRF)では，臨床医は，低流量鼻カニューレ酸素供給，高流量鼻カニューレ酸素供給，または機械的人工換気などの呼吸療法を選択します．胸部コンピューター断層撮影(CT)検査は，COVID-19肺炎の診断に大きく貢献しましたが，コストと放射線被曝による患者への潜在的な害を考慮する必要があります．この研究は，酸素化指数や血液検査結果などの臨床指標を使用して，新型コロナウイルス感染症による急性肺傷害の定量的範囲を予測するために実施しました．

○2020年4月〜2022年2月までの間に，京都府立医科大学附属病院に入院した373名のCOVID-19患者のうち，酸素療法を必要としたAHRF患者192人のデータを分析しました．多重ロジスティック回帰を使用して，胸部CTスキャン画像より算出された肺浸潤容積（LIV）と他の13項目の他の病態生理学的または生化学的検査値との間の相関関係を決定しました．

○臨床パラメータの中から酸素飽和度/吸気酸素比(SF比)および血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)濃度がLIVに関連する因子として特定されました．肺傷害がLIV≧20%で重症であるか否かの2値分類では，境界線としてLD=2.2×[SF比]-182.4が得られ，その正確度(accuracy)，精度(precision)，診断オッズ比(diagnostic odds ratio)はそれぞれ0.828，0.818，23.40でした．

〇これらのデータは，胸部CTスキャンを行わずに，SF比とLD濃度を使用して，COVID-19肺炎による急性肺傷害を精度高く推定できることを示唆しました．今回の知見は，臨床医が低コストかつ低侵襲性の検査結果を用いて，迅速に急性肺傷害レベルを予測し治療方針を決定できる判断基準を提供するものと考えます．

研究概要

　京都府立医科大学大学院医学研究科　総合医療・地域医療学　助教　松原慎，同　教授四方哲，分子病態感染制御・検査医学　准教授　稲葉亨，麻酔科学　病院助教　須藤和樹，京都府立医科大学附属病院　集中治療部　准教授　小尾口邦彦，同　病院長　佐和貞治ら研究グループは，新型コロナウイルス感染症患者における急性肺傷害の予測に関する研究を実施し，本件に関する論文が科学雑誌『Journal of Infection and Chemotherapy』に2023年11月19日付けでオンライン掲載されましたのでお知らせします．

　本研究では，胸部CTスキャンを行わずに，酸素飽和度/吸気酸素比（SF比）と血清乳酸デヒドロゲナーゼ（LD）濃度を使用して，COVID-19肺炎による急性肺傷害を精度高く推定できることを示唆しています．臨床医が低コストかつ低侵襲性の検査結果を用いて，迅速に急性肺傷害レベルを予測して治療方針を決定できる判断基準を提供するものと考えます．

論文情報

雑誌名　Journal of Infection and Chemotherapy
発表媒体　オンライン速報版　
雑誌の発行元国　日本
オンライン閲覧　可　https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1341321X23002854
掲載日　2023年11月19日(日本時間)
論文タイトル（英）
　Prediction of acute lung injury assessed by chest computed tomography, oxygen saturation/fraction of inspired oxygen ratio, and serum lactate dehydrogenase in patients with COVID-19

代表著者
京都府立医科大学大学院医学研究科　総合医療・地域医療学　松原慎
京都府立医科大学大学院医学研究科　麻酔科学　須藤和樹

共同著者　
京都府立医科大学大学院医学研究科　麻酔科学　串本洸輔
　京都府立医科大学附属病院　集中治療部　吉井龍吾
　京都府立医科大学附属病院　集中治療部　井上敬太
　京都府立医科大学大学院医学研究科　麻酔科学　木下真央
　京都府立医科大学附属病院　集中治療部　小尾口邦彦
　京都府立医科大学大学院医学研究科　総合医療・地域医療学　四方哲
　京都府立医科大学大学院医学研究科　分子病態感染制御・検査医学　稲葉亨
　京都府立医科大学附属病院　佐和貞治

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