テキストサイズ

  • テキストサイズ 中
  • テキストサイズ 大

JP

検索

EN

Menu

閉じる

【論文掲載】心臓外科手術におけるClotProシステムと トロンボエラストメトリーの比較調査 ~新規血液粘弾性装置の臨床導入により輸血製剤使用量の削減が期待される~

本研究成果のポイント

○心臓外科手術においてベッドサイドで測定可能な凝固テストを臨床導入することで、輸血製剤の使用量を削減可能であることが報告されています。特にトロンボエラストメトリーを組み入れた輸血アルゴリズムの有用性が示されていますが、それらと新規血液粘弾性装置であるClotProシステムによる測定値の互換性を評価することが、同装置を用いたあらたな輸血プロトコルを作成する上での重要な因子となります。
○京都府立医科大学附属病院において、予定心臓手術患者を対象とした前向き臨床研究を行いました。新旧の血液粘弾性装置で対応した各測定テスト間で、粘弾性振幅は高い相関性と許容可能な平均誤差率を示しましたが、凝固時間値はばらつきと平均誤差が大きくなる結果でした。一方、ClotProの凝固時間値は外科的止血で重要な生体のトロンビン生成を鋭敏に反映しました。また、ClotProによるフィブリン粘弾性値は血漿フィブリノゲンや凝固第13因子とも高い相関性を有しました。
○輸血量の削減効果が高いトロンボエラストメトリーの輸血トリガー値を元に算出されたClotProの輸血トリガー値は、高い特異度と精度を持ってトロンボエラストメトリー結果を予測可能であることが示されました。
 

研究概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科 疼痛・緩和医療学 講師 小川覚ら研究グループは、成人の心臓外科手術患者を対象に新旧の血液粘弾性装置を比較する単施設前向き観察研究を実施し、本研究に関する論文が、科学雑誌『Scientific Reports』に2022年10月14日付けで掲載されました。
 本研究では新規血液粘弾性装置であるClotProシステムと現在臨床で最も普及しているトロンボエラストメトリーの比較調査を行いました。その結果、ClotProシステムによる各種測定値はトロンボエラストメトリーで対応する各種測定値と高い互換性を有していることが明らかとなりました。一方で、ClotProシステムの測定値は外科的止血に特に重要とされている生体のトロンビン生成をより鋭敏に反映していることが明らかとされ、新規凝固モニタリング装置として既存装置に対しての優位性が示唆されました。
 現在、COVID-19感染症に伴い献血者数が減少しており、輸血製剤の供給不足が本邦でも社会的な問題となっています。血液製剤の使用量が多い心臓血管外科手術では血液凝固の検査結果に基づく適正な輸血診療の実施が求められています。血液粘弾性装置の臨床普及が加速することで血液製剤の使用量が減少し、その結果として輸血に伴う重大合併症を回避させ生命予後が改善されることが期待されます。

論文情報

雑誌名 Scientific Reports(科学雑誌) 
発表媒体 オンライン版
オンライン閲覧 可
URL https://www.nature.com/articles/s41598-022-22119-x
掲載日 2022年10月14日(金)(日本時間)
論文タイトル A comparison of the ClotPro system with rotational thromboelastometryin cardiac surgery: a prospective observational study
〔日本語:心臓外科手術におけるClotProとトロンボエラストメトリーの比較:前向き観察研究〕
代表著者
 京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 吉井龍吾
共同著者
 京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 佐和貞治
 京都府立医科大学大学院医学研究科 外科学 心臓血管・小児心臓血管外科部門 川尻英長
 京都府立医科大学大学院医学研究科 疼痛・緩和医療学 天谷文昌
 University of Oklahoma Health Sciences Center Department of Anesthesiology 田中健一
 京都府立医科大学大学院医学研究科 疼痛・緩和医療学 小川 覚
 
プレスリリース資料はこちら 

 

〒602-8566. 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465

お問い合わせ先
TEL:075-251-5111
FAX:075-211-7093