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【論文掲載】心臓外科手術におけるトラネキサム酸の薬効モニタリング法~トラネキサム酸の過量投与を防止し合併症を軽減する~

本研究成果のポイント

〇  外科手術、特に心臓外科手術では抗線溶薬であるトラネキサム酸の使用による出血量の軽減及び輸血製剤使  用量の削減が報告されています。一方でベッドサイドでの同薬の薬効評価が困難のため、過量投与に伴う痙攣や血栓症などの有害事象の発生が問題となっています。
○ 本研究では、京都府立医科大学附属病院において、心臓手術予定の患者を対象にClotProシステムの新たな検査手法であるTPA-testの測定項目を活用し、手術中に単回投与されたトラネキサム酸の薬効を調べたところ、術翌日にかけて経時的に消失する過程が観察することができました。
一方、重度の腎機能障害を合併した患者においては、術翌日でも薬効残存が確認され、トラネキサム酸の排泄が著しく遅延していると示唆するものでした。
○TPA-testはベッドサイドで使用可能な検査手法であり、臨床現場で盲目的に投与されていたトラネキサム酸の薬効を簡便に評価できることから、同薬の投与量を減少させることが可能となります。

 

研究概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科 疼痛・緩和医療学 講師 小川 覚ら研究グループは、同大学大学院医学研究科 心臓血管外科学と合同で心臓外科手術患者を対象に新規検査手法を用いてトラネキサム酸による抗線溶作用の薬効モニタリングを行う前向き観察研究を実施し、本研究に関する論文が、科学雑誌 『British Journal of Anaesthesia』 に2024年4月26日付けで掲載されましたのでお知らせします。
 本研究では血液粘弾性装置のClotProに実装されている新たな検査手法であるTPA-testを用いてトラネキサム酸の薬力学的評価を行いました。その結果、TPA-testは低濃度のトラネキサム酸の検出性に優れており、抗線溶効果の術後残存を評価可能であることが明らかとなりました。また重度の腎機能障害患者ではトラネキサム酸の排泄が遅延することが明らかとなったため、TPA-testは腎機能障害を有した心臓手術患者におけるモニタリングとして特に有用である可能性が示唆されました。
 現在、ベッドサイドでトラネキサム酸の薬効をモニタリングする手法は確立されていないことから、手術患者に対しても同薬が盲目的に過量投与される傾向にあり、痙攣や血栓症等の合併症の発生が大きな問題となっています。トラネキサム酸の薬効モニタリングを臨床導入することで同薬の投与方法が適正化され、結果として関連合併症の発生を防止させることが期待されます。
 

論文情報

雑誌名 British Journal of Anaesthesia
発表媒体 オンライン速報版
雑誌の発行元国 英国
オンライン閲覧  https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S000709122400179X
掲載日 2024年5月1日(日本時間)
論文タイトル(英・日)
 Point-of-care efficacy testing for tranexamic acid: A proof-of-concept study in cardiac surgical patients
(トラネキサム酸の薬効評価を目的としたポイント・オブ・ケア・テスト:心臓外科手術患者における概念実証研究)
代表著者
  京都府立医科大学大学院医学研究科 疼痛・緩和医療学 小川 覚 
筆頭著者
    京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 吉井龍吾

共同著者 
  京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学 高橋裕也
  University of Oklahoma Health Sciences Center, Department of Anesthesiology 田中健一
  京都府立医科大学大学院医学研究科 心臓血管外科学 川尻英長
  京都府立医科大学附属病院 佐和貞治
  京都府立医科大学大学院医学研究科 疼痛・緩和医療学 天谷文昌
   
 プレスリリース資料はこちら

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