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【論文掲載】『細胞を傷害部位に集め、腎臓病を悪化させる』-線維化に関与する線維芽細胞を動員させるCCN1に注目した治療の検討-

本研究成果のポイント

〇傷害を受けた尿細管から分泌される因子が、線維芽細胞を傷害部位に集めることを確認しました。
○その因子は、傷害早期に尿細管から分泌されるCCN1であることを同定しました。
〇CCN1は、腎傷害が重度であると、腎臓の線維化を促進することが示唆されました。
〇CCN1の阻害は、急性腎障害から慢性腎臓病への移行を防ぐ治療候補と考えられ、今回その機序の一端を解明したことで、今後の治療薬へ繋がることが期待されます。

研究概要

 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 助教 草場哲郎、同 研修員 中田 智大 の研究グループは、傷害を受けた尿細管から分泌される液性因子として、Cellular Communication Network Factor1(以下「CCN1※1」という。)を同定しました。CCN1は、腎傷害が重度であると、腎臓の線維化を促進することが示唆され、CCN1を阻害することは、急性腎障害から慢性腎臓病への移行を防ぐ治療候補と考えられました。本研究に関する論文が令和7年3月6日(木)に科学雑誌『iScience』誌に掲載されましたのでお知らせします。
 全世界で慢性腎臓病の患者さんは増加しています。慢性腎臓病が進行すると、最終的に腎代替療法(血液透析や腹膜透析、腎移植)が必要となります。慢性腎臓病を悪化させる因子として、脱水や薬剤による一過性の急激な腎臓への傷害(急性腎傷害:AKI)の関与が近年注目されています。急性腎傷害の後には腎組織は修復されるため腎機能は通常回復しますが、その修復が不十分であると、腎臓の組織は線維化と呼ばれる変化が引き起こされ、慢性的な機能障害(慢性腎臓病:CKD)に移行することが示されています。また腎臓の線維化に大きく関与する細胞が線維芽細胞であるということが知られています。腎傷害が起きた際に、線維芽細胞は傷害された部位に集まってきますが、そのメカニズムの解明は不十分でした。本研究では、尿細管※2が傷害を受けた直後からCCN1という分子を分泌し、線維芽細胞を傷害部位に集めていることを明らかにしました。傷害尿細管の周囲に集まった線維芽細胞は、傷害の程度が重度であった場合にはその場にとどまるため、結果として組織の線維化が促進されることが示されました。今後はCCN1を標的とした線維化・慢性腎臓病の悪化を抑制する治療法として活用されることが期待されます。

論文情報

雑誌名 iScience
発表媒体 オンライン速報版 
オンライン閲覧 可 https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042%2825%2900437-7
掲載日 2025年3月6日(日本時間)
論文タイトル(英・日)
 Injured tubular epithelia-derived CCN1 promotes the mobilization of fibroblasts towards injury sites after kidney injury
[日本語:傷害を受けた尿細管上皮由来のCCN1は、腎傷害後の傷害部位への線維芽細胞の動員を促進する]
代表著者
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 草場哲郎
共同著者 
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学  中田智大
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学  奥野-尾関奈津子
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 中村匡志
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 澤井慎二
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 梅原皆斗
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 山内-沢田紘子
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 南田 敦
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 砂原康人
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 的場弥生
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 中村 格
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 仲井邦浩
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 山下紀行
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 桐田雄平
 京都府立医科大学大学院医学研究科 腎臓内科学 玉垣圭一
 ワシントン大学セントルイス校 腎臓病学 Benjamin D Humphreys
 京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器内科学  的場聖明
 
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