大学院科目名 | ゲノム医科学 |
医学部教室名 | 分子医科学教室(ゲノム医科学部門) |
スタッフ |
教授 田代 啓
准教授 中野 正和 助教 大見 奈津江 助教 徳田 雄市 助教 田中 雅深 客員教授 池川 雅哉 客員教授 八木 知人 |
研究内容 |
1. 昔は疾患の発症や進行の個人差を「運」だと言っていましたが現代医学は「遺伝的個体差」だと看破しました。北米とヨーロッパで双子養子追跡研究によって、個体差/個性に対する遺伝と環境の影響の比率(ゲノム寄与率)が、身長、知能指数、双極性障害などの表現形質について1割から9割であることが明らかになっています。ゲノム寄与があるとわかったので、では個体差/個性はゲノム上にどの様に書かれているのかが課題ですが、多くはゲノム上の一塩基多型(SNP)または、一塩基変異(SNV)に書かれていて、その組み合わせで個体差/個性が表現されると判明しました。その実体を具体的塩基配列の個体差(SNPs)で記載し尽くすことにより、分子標的創薬の起点を同定すると同時にゲノム診断を実用性のあるレベルに引き上げる個人最適化医療をきれいな形で始めるための基盤を作っています。これは、客観性が高く、予断と偏見に左右されない、1000年経っても揺るぎなく残っていく堅固な結果を出していけます。客観性の高い研究を行なっていることが我々の特色です。
2. 多因子疾患解明への客観性の高い研究を、緑内障(Glaucoma)について本学眼科学教室との共同で実行して2015,16,17の3年連続Nature Genetics誌に、2021年にはJAMA誌に成果論文を発表しています。緑内障は、70才以上の日本人で約10%、40才以上では約5%の有病率がある最大規模の多因子疾患です。早期に発見して点眼薬による介入によって長期予後(特に人生最後の20年の視野)を改善できるのみならず、先制医療でも長期予後への介入が期待できる疾患ですが、岩瀬先生によって行われた多治見スタディで、患者の89%は、自分が患者だと気づけていない疾患です。気づくための視野検査や眼底検査は、眼科専門医が必要で費用と時間もかかりすぎるので、住民検診や職場検査できる簡便な血液検査が期待されます。それが、血液0.1mlでできる緑内障発症リスクゲノム予測です。実現に向けて、倫理承認のもと19年間で7500例の方々にご協力いただき、DNAを使い切る心配が無いように、全例細胞株化しています。これは、エイズ研究のNCIのWinkler先生とO’Brien先生との共同研究で直々に学んだ方法です。 3. 次世代シーケンサー(NGS)をセットアップ、運用して、本学血液内科学との共同でFollicular Lymphomaの悪性化マーカーの同定に成功しています。神経内科学との共同で新しい神経変性疾患を同定しました。病気を発見したということです。また、眼科学との共同で緑内障やフックス症候群の病態解明を進めています。 4. 分子や細胞の存在や物性や機能について、新規に発見・命名して解析するプロであり続けます。誰かが見つけた分子の有用性を調べるだけでは無く、未知分子の新発見をして高度で堅固な分子の取り扱い技術を養った上で医学的問題に挑戦します。当グループが発見命名したPOTAGE/HECTD4や、田代が異動前にノーベル賞学者・本庶佑研究室に在籍中に発見命名したSDF-1, SDF-5/SFRP2の分子の機能解析を培養細胞とマウスモデルで生化学的、分子生物学的に実験しています。また、ゲノム解析の共同研究を通じて新しい抗原提示細胞の発見に貢献しました。 5. サイトカインの専門家として、本学附属病院の各科と共同で、新型コロナ症例の血中サイトカイン濃度を測定して、サイトカインストームを濃度の高低のみならず濃度変化率によっても定義することを提案しました。(TakashimaらFront. Med., 11, 1319980, 2024)
学問へのお誘い
医学生や若い医師は夢を描いているものです。
教科書を書き変える発見をして人類に貢献したいものであると。
新しいホルモンやサイトカインや神経伝達物質を発見したい。
自分が見つけた分子の正常機能と疾患への関与の研究をやりたい。
疾患や遺伝的体質の原因となるゲノム配列上の変異を見つけたい。
新しい細胞を発見したい。
新しい疾患を発見したい。
それらを薬剤や治療法、診断方法として役立てたい。
当教室ではこれらの夢のすべてが以下のように実現しています。
新しいホルモンやサイトカインや神経伝達物質を発見したい
正常機能と疾患への関与の研究をやりたい
新サイトカイン・SDF-1の発見・命名・解析(Tashiro, HonjoらScience 261, 1993)
SDF1遺伝子上のSNPがエイズ進行制御に関与するとの結果(WinklerらScience 279, 389, 1998)
それを薬剤や治療法、診断方法として役立てたい
SDF-1受容体拮抗薬・モゾビルは、リンパ腫と骨髄腫の治療薬 一部の国では抗エイズ薬として認可
疾患や遺伝的体質の原因となるゲノム配列上の変異を見つけたい
正常眼圧緑内障の関連変異同定の先陣争いで世界1位 (NakanoらPLoS ONE 7:e33389, 2012)
Fuchs角膜潰瘍のゲノム変異解析 (NakanoらIOVS, 56: 4865-4869, 2015)
アレクサンダー病のゲノム変異解析 (YasudaらSci. Rep., 9: 14763, 2019)
新しい疾患を発見したい
新しい疾患単位を発見、脳神経内科と共同で新しい成人発症白質脳症を発見
(YasudaらNeurol. Genet., 6: e442, 2020)
新しい細胞を発見したい
新しい抗原提示細胞を発見 (KamioらJ. Immunol., :209(3):498-509, 2022)
共同研究者の皆様と教科書を書き変えるインパクトの発見ができました。 |
研究業績 |
※主な業績は下記の通りです。
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問い合わせ先 |
TEL:075-251-5346 FAX:075-251-5347
e-mail:tashiro@koto.kpu-m.ac.jp
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教室独自のHP |
作製中
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研究へのご協力のお願い
下記の通り、京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認を受けた研究を行っております。これらの研究への協力を希望されない場合、もしくは内容にご不明な点がある場合は、各研究の担当者へお知らせ下さい。