図書館メールNews 第263号………………>>>>>2014. 8. 8発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  目次 ……………………………………………………………………………………………… 【1】--- 本学発の論文新着速報(2014.6月・7月分) ……………………………………………………………………………………………… 【2】--- < 特別寄稿 > 「大学の歴史」から見えてくる「大学の今」    吉見俊哉著「大学の歴史」(岩波新書)を読んでの考察                  神経生理学教室 / 八木田 和弘先生 ……………………………………………………………………………………………… 【3】--- 図書館内の運搬作業に関わるお知らせ 【8月12日(火)】 ……………………………………………………………………………………………… 【4】--- 最新版インパクトファクターがリリースされました ……………………………………………………………………………………………… 【5】--- 松本仁介医学振興基金に、2冊追加しました! ……………………………………………………………………………………………… 【6】--- 文献検索講習(15分講習会)を実施しています ……………………………………………………………………………………………… 【7】--- 平成26年度第2回企画展示 <さらば 花園学舎:本学医学科の教養教育のあゆみ>展を開催しています ……………………………………………………………………………………………… 【8】--- 夏季休暇中の貸し出し期間を延長します ………………………………………………………………………………………………    [ Book Review ]・・・編集後記にかえて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】--- 本学発の論文新着速報(2014.6月・7月分) ……………………………………………………………………………………………… 京都府立医科大学発の学術論文(PubMed 収載)のうち、2014.6月・7月 発行分のものについて、お知らせします。( 98 件)     ◆↓ 次のURLをクリックしてください ↓ ◆   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/myncbi/collections/public/1VatvFb7pgfpWsVRF6RyuxvQB/  なお、こちらの情報は以下の抽出条件のもとに月に一回お知らせしています。            @直近2ヶ月分             A論文の筆頭著者が本学所属 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】--- < 特別寄稿 > 「大学の歴史」から見えてくる「大学の今」     吉見俊哉著「大学の歴史」(岩波新書)を読んでの考察                   神経生理学教室 / 八木田 和弘先生 ……………………………………………………………………………………………… 世界で最初の大学 12世紀末、北イタリア・ボローニャに誕生したボローニャ大学が世界で初の大学 であるが、13世紀になり他のイタリアの諸都市に大学がつくられ、さらにはパリ 大学やオックスフォード・ケンブリッジの両大学などヨーロッパ全体に大学が誕生 していった。当時ヨーロッパでは、ベネチアやフィレンツェに代表される自治都市 が経済・文化の中心であり、商人のみならず吟遊詩人、流浪の修道士など様々な人 間たちが出会い集う場所がこれら自治都市であった。大学は、いわば都市間を移動 する人々の知的ネットワークを媒介する「メディア」として誕生した。 つまり、最初の大学は、教授が学生を教える場所、といった現在のイメージとは異 なり、むしろ「都市の自由」を背景として自由な知識人たちが出会う知識と情報ネ ットワークの結節点が大学の姿であった。 「大学(University)」の語源は普遍性(ユニバーサリティ)や宇宙(ユニバース) とは何の関係もないラテン語の “Universitas”であり、利害をともにする学生の 「組合団体」といった意味であった。その意味で、共同体としての大学の成り立ち が大学の自治や学問の自由といった、現在にも通じるある種の価値観の源泉と言え るのかもしれない。 一方、学生主体の「組合団体」である”university”に対し、教師の利益を守るた めの互助団体として誕生したのが”college(カレッジ)”だという。学生たちの組 合が聴講料を楯にしたのに対して、教師たちのカレッジは「学位授与権」をもって それに対峙した。中世ヨーロッパの大学の成り立ちは、家族的な(塾的な)もので はなく一種の契約関係のうえに成立した、やや緊張感のあるシステムであったようだ。 ただ、この大学の誕生の過程で中心的な役割を果たしたのは法学者たちであり、医 学を教授する大学組織は少し違った経緯を辿る。新興の学問である医学は既存の法 学を中心とする大学に対抗する形で自らの組合団体を作らなければならず、学生と 教師が協力し合いながら大学の組織化を進めていった。その結果、医学および学芸 諸学問の教員団は、法学分野より遥かに強い大学運営に対する影響力を有していた という。これも、今に通じるものがあるように感じるのは私だけだろうか。13世 紀末頃までには、医学・学芸の学生にも法学分野の学生と同等の権利を認めること で一応の決着を見たが、平行して教員団は学位授与権に加えて教育内容の決定権や 教員人事権を獲得し、現在につながる自治権を確立していく。 当時の大学は普遍性を志向しており、講義はすべてヨーロッパの共通語であるラテ ン語で行われ、講義内容も地域差がほとんどなかった。その背景として、古代ギリ シャ哲学とキリスト教神学という二つの学問体系が共通の基盤としてヨーロッパ全 体に行き届いていたことが大きい。知識人の自由な行き来が可能であった自由都市 の繁栄と大学とは密接な関係にあったのだ。 大学の一度目の「死」 12世紀に誕生した大学は近代に一度衰退し「死」んでいる。その理由として、キ リスト教神学による宗教教育の場となったことや自治都市から領邦国家の形成とい う時代の波があり、保守化による大学の官僚組織への組み込みによる知の結節点と しての役割の終焉があげられる。大学は、近世において、知の主体にはなり得なか った。古くさい象牙の塔に成り下がっていたのである。デカルト、パスカル、ロッ ク、スピノザ、ライプニッツという近代知の巨人はほとんど大学教授ではなかった。 16世紀から18世紀まで、大学は一度死んでいたのである。 しかし、決定的であったのは、16世紀の印刷技術の発明による“メディア革命” であった。本が印刷により多数流通するようになると、印刷技術に媒介された知の ネットワークが大学を凌駕する知の拠点を形づくっていく。これによって、19世 紀まで永きにわたって大学は知の拠点としては必要とされない存在となっていた。 印刷技術に基づいた書籍を中心とする印刷物が、知識人が活躍する主戦場となった のである。 大学、二度目の誕生 16世紀に一度死んでいた大学は、19世紀に劇的な二度目の誕生を迎えることに なる。19世紀初頭のプロイセンでおこる。フランス革命に続くナポレオン戦争に 敗北したプロイセンでは、改革的意識の高まりとナショナリズムの高揚を背景とし た新しい教育改革の気運が高まった。 それを体現したのがヴィルヘルム・フォン・フンボルトによる「フンボルト理念」 であり、これによって大学は奇跡の復活を遂げる。その中心が1810年に誕生したプ ロイセンのベルリン大学である。 その少し前、カントによってその萌芽が生み出されている。そこでは、神学、法 学、医学を大学外からの要請によって成り立つ「上級三学部」と位置づけ、哲学を 「下級学部」と位置づけて外部から完全に独立した自律的な知を担うとした。学問 の自由しか望まないという謙虚さから「下級学部」としたものの、哲学部は自由な 知つまり「理性」を学問する学部であり、大学の自律性に必須であるために上級三 学部にとっても有用な存在であった。つまり、有用性と理性の並立と葛藤を内部に 包含することで、大学は他のアカデミーや技能専門学校と根本的に異なる存在とな っている。 さらにフンボルトによって「理性の大学」から「文化の大学」への転換が図られ、 実質的に価値を有する存在となり得た。自然と理性を「文化と教養」とし、さらに これを大学の役割として「研究」と「教育」の一致という形で定義した。つまり、 学生は、知識を授けられるだけの存在ではなく、新たな知識を発見し知識を進歩さ せることが求められる、自律的に考える存在であるとした。この「教育と研究の一 致」というフンボルト理念により大学は社会の要請に応えることと知の拠点である ことの両立を達成し、劇的な二度目の誕生をはたす。 そして、フンボルトの「大学」がアメリカにおいてさらにブラッシュアップされ たものが、1876年ジョンス・ホプキンス大学が設置した「大学院」である。大学院 は「より高度な研究型教育」を旨とする教育機関で、20世紀になりアメリカの大 学が世界を席巻する原動力になる。ジョンス・ホプキンスは教授に何よりもまず第 一線の「研究者」であることを要求した。現在の大学の形がここに始まる。つまり、 19世紀はじめにドイツでおこる「フンボルト・インパクト」が19世紀末にアメ リカでジョンス・ホプキンス大学における「大学院・インパクト」となって大成功 を納めていく。 そして、ふたたび死に直面しようとしている「大学」 現在、大学改革が声高に叫ばれている。この現象は日本だけにとどまらず、世界的 なトレンドである。大学が二度目の「死」を迎えようとしていることへの危機感の 現れである。 その原因は、最初の大学の死と同様に、「メディア革命」が大きな要因となって いる。現在、私たちは、世界中どこに居てもハーバード大学など世界の一流大学の 講義を聴講できる。そう。 インターネットである。インターネットの発明と普及により、知の拠点である大 学から、コンテンツが世界中に無料でどんどん配信されている。それをネット受講 しレポートを提出すれば、採点され修了証までもらえるようになっている。最近流 行の「ハーバード白熱教室」的な形で、これまで大学内に限定されていた知のコン テンツが誰でも好きなときに手に入る時代になり、「いったい、大学に入学して講 義を受ける意味はどこのあるのか?」という疑問が浮かんでも不思議ではない。 私の考えるその疑問に対する答えもまた、テレビやネットで簡単に見られる「ハ ーバード白熱教室」の中にある。実は、マイケル・サンデル教授がとる講義の形態 は古代ギリシャにおいてソクラテスがとった手法そのもので、多数の聴講生がいる 教室においても「個人との対話」を軸にして議論を進めている。私は、大学あるい は大学院における高等教育において、最も効果が大きいのはこの「個人との対話形 式」の教育であると考えている。そして、大学の価値もまた、教授との「個人的対 話」が常にできる権利を得られるところにあると考えている。サンデル教授のよう な政治学など文系の学問だけでなく、医学や生命科学といった理系でも、いや、む しろより一層、個人との対話形式での教育が新たな知の創造の源泉になると信じて いる。 知の拠点が、大学からインターネットに取って代わられようとしている。これが 現在の状況である。大学の教授は学生にどのような“知”の形を提供できるだろう か?また、学生は大学でなにをつかみ取ることができるだろうか?それぞれに「ネ ット上にはない“知”の形」を模索し、発信して行く必要がある。     ※八木田先生より、特別にエッセイを寄せていただきました。                 ありがとうございました!! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】--- 図書館内の運搬作業に関わるお知らせ【8月12日(火)】 ………………………………………………………………………………………………  8月12日は花園学舎移転に伴う図書等の移動のため、図書館本館では  エレベーター・地下書庫リフトを稼働させ終日運搬作業を行います。  作業場所  入館ゲート    → 1F エレベーター        地下エレベーター → 地下書庫 (地下1F・2F) ご迷惑をおかけしますが、利用者の皆さまにはご理解とご協力をお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】--- 最新版インパクトファクターがリリースされました ……………………………………………………………………………………………… 最新版のインパクト・ファクター(2013年)がリリースされましたので  「Journal Citation Reports(JCR)」をどうぞご利用ください。  JCRとは、論文の引用データを使って、学術雑誌の影響度を評価・比較する  分析ツールです。  4月にインターフェースが変わり、検索方法も変わりました。簡単な検索方法  を以下に記しますので、参考にご覧ください。  1)次のURLにアクセスする。https://jcr.incites.thomsonreuters.com/  2)“Continue without signing in”をクリックしてログインする。  3)ジャーナルごとの指標を見たい場合には、“Journals By Rank”をクリック    する。  4)インパクトファクター順のデータが表示される。タイトル順にしたい場合    には、"Full Journal Title"をクリックする。ジャーナル名で検索したい    場合には、左上の検索ボックスに、雑誌名(フルタイトルまたは前方一致)、    入力して検索する。  ※全タイトルのインパクトファクターをダウンロードしたい場合には、右上   に表示されている、下向きの矢印マークをクリックして保存形式を選択して   ください。  ※新プラットフォームのJCRでは「自然科学版(SCIE 8,100 誌以上)」に加え、 「社会科学版(SSCI)3,500 誌以上」を利用することができるようになりました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【5】--- 松本仁介医学振興基金に、2冊追加しました! ……………………………………………………………………………………………… デジタルアーカイブページ松本仁介医学振興基金の古医書コレクションに新たに 2冊追加いたしました。 今回追加したのは、『内科秘録』、『蘭説辨惑』の2冊です。ぜひご覧ください。 今後もタイトル数を増やしていく予定です。 ◆京都府立医科大学附属図書館デジタルアーカイブ http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/library/denshi/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【6】--- 文献検索講習(15分講習会)を実施しています ……………………………………………………………………………………………… 一昨年から、マンツーマン・短時間の文献検索講習を実施しています。   PCを操作しながら、図書館員が文献検索のお悩み解決のお手伝いをするものです。   これまでに受講された方の身分は、看護師、薬剤師、医師のほか、リハビリ   技師、言語聴覚士などの医療技師、研修医、教室秘書、事務職員などさまざま   ですが、ご好評をいただいています。 PubMedや医中誌Webといったデータベースの基礎的な検索方法のコース、あるいは   データベースの特徴、ホームページの使い方、基本的な検索方法、文献PDFの   入手などについて基礎的な内容を短時間で説明させていただくことも可能です。 毎週水曜日に実施しています。申込不要ですので、お気軽に図書館カウンターに お声かけください。お待ちしております。 ◆ 日時:平成26年7月30日(水)〜10月29日(水)の毎週水曜日         11:00 / 16:00 の2回      ※上記と異なる日程や時間を希望される方はご相談ください。 ◆ 場所:図書館カウンター周辺 ◆ 事前申込:不要 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【7】--- 平成26年度第2回企画展示 <さらば 花園学舎:本学医学科の教養教育のあゆみ>展を開催しています ……………………………………………………………………………………………… 平成26年度第2回企画展示 <さらば 花園学舎:本学医学科の教養教育のあゆみ>展を開催しています。 ■期間:平成26年8月1日(金)〜9月30日(火)  ■場所:附属図書館1階 特設展示コーナー  チラシはこちら → http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/news/2014/files/8176.pdf  今年度、本学の教養教育は三大学共同化により大きく変貌します。 本学の医学科生が長年親しんだ花園の地を離れるにあたって、開学以来の医学科 教養教育のあゆみを図書館所蔵の資料から振り返ります。どうぞご覧ください! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【8】--- 夏季休暇中の貸し出し期間を延長します ……………………………………………………………………………………………… 7月14日(月)から8月9日(土)まで、貸出期間は1ヶ月    8月11日(月)から8月27日(水)まで、返却期限が9月11日(木) 8月28日(木)からは通常通り(2週間) ★ 期間延長は図書に限ります。    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ……………………………………………………………………………………………… [Book Review]  「戦国時代のハラノムシ―『針聞書』のゆかいな病魔たち」 ( 長野 仁 東 昇 共著  国書刊行会 2007)     岩波書店の広報誌「図書」に連載されていた池内紀<生きもの図鑑>は、妙に 面白い連載記事であった。学術的に記述されたのが、この本である。『針聞書』 (九州国立博物館所蔵)という医書の中にある63種のゆかいな病魔たち「ハラ ノムシ」(スタマック・モンスター!)がカラーで掲載されている。以前にもこ のレビューで紹介(第222号)されたが、再度、おススメしておきたい。一読す れば、腹の虫が笑うだろう!(第2閲覧室 490.9/N)(S.K.)                 トップページ:  http://booklog.jp/users/kpumlib   この本のページ: http://booklog.jp/item/1/4336048460 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ………………………………………………………………………………………………  図書館メールNews  第263号 2014. 8. 8発行(隔週金曜日発行)  編集・発行 : 京都府立医科大学附属図書館          library@koto.kpu-m.ac.jp          http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/          ………………………………………………………………………       (図書館メールNewsのバックナンバーはこちらから↓) http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/sougouannai/mailnews.html ………………………………………………………………………………………………