図書館メールNews 第219号………………>>>>>2012.11.08 発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  目次 ……………………………………………………………………………………………… 【1】--- コラム第6弾! 第6回 「日米図書館の書庫と私の研究」                    / 麻酔科学教室 佐和 貞治 先生 ……………………………………………………………………………………………… 【2】--- 貴重書全文アーカイブ、2冊追加しました! ……………………………………………………………………………………………… 【3】--- 附属図書館・合同講義棟20周年記念事業の実施について ……………………………………………………………………………………………… 【4】--- 【募集】あなたの"座右の書"を教えて下さい!(二十周年企画) ……………………………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………………………… [ Book Review ]・・・編集後記にかえて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】 コラム第6弾! 第6回 「日米図書館の書庫と私の研究」                    / 麻酔科学教室 佐和 貞治 先生 ………………………………………………………………………………………………   私が京府医大麻酔学教室に入局したのは1985年、初代宮﨑正夫教授の時代で  あった。その後、一次出張を終えて4年目に大学に帰還した私は、麻酔科学教室  の駆け出し助手に加えて頂いた。当時、橋本悟先生(現集中治療部病院教授)  の仕事を手伝って、パソコンNEC PC-9801上で作動していたdBase-Ⅲというソフ  トウェアを利用して麻酔症例のデータベース整備を行なっていた。せっかくな  ので1989年の年次麻酔統計を整理しようということになった。ただ論文にする  ために何か比較するものが必要ということで、探してみると教室の大先輩の藤  田俊夫先生が1963年の麻酔統計を宮﨑教授が就任された1966年に「麻酔15: 784,   1966」として報告されておられたことを知った。そこで図書館の書庫に行って、  古い蔵書の中から目的の藤田先生の論文を探し当てた。私は比較研究としてまと  めることに意義を感じて論文をまとめて、「京府医大雑誌99: 981, 1990」に掲  載を頂いた。まとめたデータは宮﨑先生の最終講義においても資料としてご使用  頂き、新米助手としても少しはお役に立てたと満足を感じた。雑然としたデータ  の整理は結構な苦労であったが、お陰様でデータベースなどコンピュータに関す  る多くのものを学び、のちの研究遂行の基礎体力になった。   さて、先代の田中義文教授の時代となり、橋本悟先生の紹介で1994年にカリフ  ォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)に留学する機会を得た。そこでは緑膿  菌性肺炎の肺傷害メカニズムについて研究を始めた。時代は分子生物学的手法が  大きく開花し、病原性細菌のゲノム解析と病原性タンパク質の機能同定の時代に  突入し、我々のグループも負けじとその競争に突入した。病原性に関わる未知の  仕組みが次第に明らかにされていく過程で、日和見感染菌である緑膿菌のゲノム  上の病原性遺伝子群が、黒死病の起炎菌であるペスト菌のプラスミド遺伝子群と  極めて類似していることに次第に気づいていった。そして緑膿菌の一つのタンパ  ク質が1950年代に英国のペスト菌の研究者らが感染防御効果を報告している抗原  と機能的に相同ではないかということがわかってきた。早速、UCSFの図書館の地  下室の地下(地下二階)にある古い蔵書を収めた書庫に行って、それらの論文  (Burrows TW. Nature 179:1246, 1957など)を探し当てて読んだ。この後、この  緑膿菌の病原性を解明する仕事に対する興味は高まり、夢中になってその後の研  究を進め、期待どおりの結果が得られ、ペスト菌の感染防御抗原の論文から43年  後に緑膿菌感染防御抗原の発見として一流誌に論文を掲載でき(Sawa T, et al,   Nature Medicine 5, 392-398, 1999)、私の留学生活は大変有意義なものになっ  た。   京府医大図書館の書庫、UCSF図書館の書庫に眠る古い蔵書の中の論文数編がこ  れまでの私の人生に大きく関わった。京府医大の創立は、青蓮院療養院として  1872(明治5)年であり、一方UCSFの創設は1868年(明治元年)である。両者、  歴史上の歳月では似通っている。古い医学部の図書館の古い蔵書を収めた書庫に  は、それぞれの医師の人生に大きく影響をするかもしれない、いまだインターネ  ットでは得られない貴重なものが眠っている。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】 貴重書全文アーカイブ、2冊追加しました! ………………………………………………………………………………………………   デジタルアーカイブページ「貴重書全文アーカイブ」に、新たに2冊追加いた  しました。   追加した項目は『醫家千字文註』『養菴先生碑銘行状 / 附録 養菴先生遺教』  の2冊です。   是非、ご覧ください。   今後もタイトル数を増やしていく予定です。   次回は『痧脹玉衡書』『醫學質驗五種青嚢瑣探』等を予定しております。   ◆京都府立医科大学附属図書館デジタルアーカイブ    http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/library/denshi/   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】 附属図書館・合同講義棟20周年記念事業の実施について ………………………………………………………………………………………………   附属図書館が現在の地に移ってきて20年が経ちました。これを記念して、  今年は様々なイベントを企画しています。ぜひお楽しみください。   <トリアス祭共催企画>   ◆10月23日(火)~11月30日(金)    ☆新館オープン20周年できごと年表      この20年間の図書館・大学・社会の動きを年表で紹介。    ☆過去の人気図書紹介      過去10年の図書館貸出ベスト3図書を紹介、展示。   ◆10月23日(火)~11月2日(金)             ・・・好評につき、期間を延長して開催しています!    ☆図書リユース市      図書館で保管する譲渡図書(重複本等)及び学内募集による図書・      雑誌等の無料譲渡    ☆図書館にある美術品を巡る旅      図書館内に展示されている美術品の一覧を作成し、一覧を元に美術品を      たどることで、図書館の隠れた魅力を紹介。   <企画展示>   ◆1月22日(火)~2月12日(火)    ☆二十周年に捧ぐ、人生の20(ツレ)-我が座右の書-展      図書館メールNewsの教員コラムに登場した本、学内で募集したお勧め本、      図書館職員のお勧め本等を、館内に展示・紹介。また、冊子を作成して      館内を巡ってもらう。   ※いずれも実施場所は図書館および図書館近辺を予定   ホームページURL:http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/event2012/eventtop/  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】【募集】あなたの座右の書を教えて下さい!(二十周年企画展示) ………………………………………………………………………………………………   20周年事業の最後は、「二十周年に捧ぐ、人生の20(ツレ)~わが座右の  書~」を来年1月に予定しております。  新館移転20周年にちなみ、本を「20(ツレ)」と見立て、教職員の皆様の人生に連れ  添っている本をご紹介します。  つきましては皆様の転機に役立った本、何度読んでも感銘を受ける本、ご自身で出版  された著書などお薦めの本を教えてください。(雑誌でも構いません)図書館で作製  する冊子に掲載、配布し、所蔵している本については館内で展示を行います。   ◆募集対象 : 推薦本の紹介文          図書館で所蔵している資料ならありがたいです。また、この機会に          ご寄贈いただける本も歓迎します。        ◆応募方法 : 図書館カウンターまたはメールにて受付ます。          「人生の20(書名)」と件名をつけてください。    応募先: 担当 日詰千栄(lib09@koto.kpu-m.ac.jp)、            西在華(lib02@koto.kpu-m.ac.jp)   ◆募集期限 :  平成24年11月30日(金)   ◆お問合せ先  電話:212-5400 (内線9-5400) 担当:日詰(ヒヅメ)、西         -- あなたの「連れ(20)」を教えて下さい。-- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ………………………………………………………………………………………………… [Book Review]・・・「音楽のたのしみ」   ロラン・マニュエル「音楽のたのしみ」(白水社 2008 復刊)は、1950年代フ  ランスのラジオで放送された人気音楽番組が元となっている。吉田秀和氏の翻訳  で読める古典的名著のひとつだろう。今回、白水uブックスで復刊された(全4巻)。  聞き手のナディア嬢との対話が絶妙で、わかりやすく読んでいて楽しい。かつて  3巻本(新装版 1966)を読みふけったのが懐かしく思い出される。こういう解説  を読めば、クラシック音楽は難しくないどころか、楽しみでさえある。復刊では、  第4巻に「オペラ」が追加されている。(S.K.)     トップページ:  http://booklog.jp/users/kpumlib/ この本のページ: http://booklog.jp/item/1/4560720975 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ………………………………………………………………………………………………  図書館メールNews  第219号 2012.11.08 発行(隔週木曜日発行)  編集・発行 : 京都府立医科大学附属図書館          library@koto.kpu-m.ac.jp          http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/library/          ………………………………………………………………………       (図書館メールNewsのバックナンバーはこちらから↓) http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/library/mailnews/index.html ………………………………………………………………………………………………