ブックタイトルNews&Views 創刊号 vol.1 Jan, 2015

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News&Views 創刊号 vol.1 Jan, 2015

R esearchViews京都府立医科大学で進めている世界的にも注目度の高い11の研究について、それぞれ研究室の代表者よりご紹介させていただきます。消化器癌患者の個別化による新たな治療法の開発近年、様々な因子が癌の発生・進展に寄与していることが明らかにされ、消化器癌患者の個々に応じた治療戦略の重要性が叫ばれている。当教室では、癌患者の予後を左右する転移の診断や新たな治療法の開発を目的として、様々な研究を行っている。1)?5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた新たな転移診断法の開発:癌組織に特異的な酵素の異常を利用して、経口投与した5-ALAの癌細胞中の代謝物の蓄積を特殊な蛍光カメラで検出する方法。これまでに胃癌・大腸癌を中心に検討を行い、肉眼では捉えることのできない微小なリンパ節転移や腹膜播種転移を手術中にリアルタイムに診断できることを発見した。2)?循環核酸を用いた新たな治療戦略の開発:血液中に循環する腫瘍関連のDNAやRNAの検出を行い、癌の腫瘍量のみならず特性をも理解することで、個々に応じた集学的治療への糸大腸癌腹膜播種光を認める消化器外科学教授大辻英吾腹膜播種巣に一致して蛍光像で蛍口を見つけた。これまでに様々な消化器癌に特異的な遊離核酸の異常を発見し、薬物療法の感受性試験としても有用性であることを発見している。3)?癌細胞に特異的なイオンチャンネルを用いた新たな治療法の開発:癌細胞の進展において重要な様々なイオンチャンネルの異常を発見し、癌細胞が低浸透圧刺激に弱いことを見出した。これらの知見を基に、腹腔内等に遊離した癌細胞に対する蒸留水を用いた低浸透圧刺激による殺細胞効果を検討し、新たな治療法を開発した。大脳皮質とその機能形成の進化学的および個体発生学的研究神経発生生物学教授小野勝彦大脳皮質はヒトを人たらしめる構造基盤の中心であり、その機能原理は形成機構の普遍性から知ることができる。私たちの部門では、大脳皮質形成過程の分子機構の解明を目的として、進化発生学的視点と個体発生学的視点の両方からアプローチしている。その成果として、細胞分化に必須の転写調節因子により、脳内の領域形成が制御されていること、さらにこの正常な領域形成が、大脳皮質機能に必須の回路形成の際に軸索の通り道を作ることが示唆された。また哺乳類大脳皮質の進化的起源を探るため、爬虫類脳を解析した結果、爬虫類の脳は非常にゆっくりと形成されることが明らかになった。従って、哺乳類が進化する過程で神経細胞の産生率が増大することにより、大きな脳を獲得したと考えられる。一方、皮質の層を形成する神経細胞は爬虫類にも存在していたことから、大脳皮質層構造の起源は哺乳類と爬虫類の共通祖先が生きていた3億年前に遡れることが推測された。これらの研究成果は、高次脳機能の獲得過程の解明につながる重要な発見と考えられる。さらに進化過程と個体発生を知ることで、脳疾患の起源まで明らかにできることが期待される。胎児期に脳の領域形成不全が生じると、これを通過する回路も異常となる(下段)アトピー性皮膚炎・皮膚がんの克服に挑む皮膚科学教授加藤則人小児・青年の約1割が罹患するアトピー性皮膚炎、最近急速に患者数が増加している皮膚がんの克服をテーマに、教室をあげて研究に取り組んでいる。アトピー性皮膚炎については、自然免疫や血小板の病態への関与、皮膚バリア機能の低下や掻破による外傷が、経皮感作による全身性アレルギー反応を誘導するメカニズム、胎児期からの生活リズムの破綻に伴うアレルギー反応への影響など、臨床での課題に即した基礎研究や臨床研究を展開し、新規治療法の開発に挑んでいる。またアトピー性皮膚炎や慢性蕁麻疹の予後予測因子の解析などの疫学的な研究や、治療アドヒアランス向上プログラムの作成にも注力している。さらに難治な皮膚がんの新規診断法・治療法の開発にも勢力的に取り組んでおり、豊富な症例数を背景に、光線力学的な手法を用いたリンパ節転移の検出法に8