ブックタイトルNews&Views 創刊号 vol.1 Jan, 2015

ページ
11/16

このページは News&Views 創刊号 vol.1 Jan, 2015 の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

News&Views 創刊号 vol.1 Jan, 2015

ResearchViews小児がんの後遺症なき治癒を目指して(小児悪性固形腫瘍の非侵襲的診断とより安全で治療後QOLの向上した新規標準治療開発のための多施設共同臨床研究によるトランスレーショナルリサーチ)小児発達医学教授細井創糖尿病におけるインスリン抵抗性およびアルツハイマー型認知症発症メカニズム解明と早期診断・予防法の開発細胞生理学・バイオイオノミクス教授丸中良典体内時計研究の拠点形成を目指して統合生理学教授八木田和弘小児がん細胞の異常遺伝子をK/Oし、さらにCDK4/6を抑制すると最終分化と細胞死が誘導された近年の分子遺伝学的診断法、造血幹細胞移植らを含む集学的治療の進歩は小児がん患児の救命率を飛躍的に改善させたが、成長発達期での強力な治療は長期・慢性的な副作用や晩期合併症を引き起こし、その後のがん経験者の社会生活上のQOLを著しく低下させていることが問題となっている。当院は、平成24年度、厚生労働省から「小児がん拠点病院」に指定され、臨床実績のみならず、当教室の臨床応用に向けた基礎研究の取り組みも高く評価された。平成25年度には文部科学省科学研究助成基盤A「小児固形悪性腫瘍の非侵襲的診断と新規治療開発のためのトランスレーショナルリサーチ」の採択を受け、臨床研究で検証する前段階の基礎応用研究の推進に全国レベルの共同研究を、平成26年度には厚生労働科学研究委託費(がん対策推進総合研究事業)「ノン・ハイリスク群小児悪性固形腫瘍の安全性と治療後QOLの向上への新たな標準治療法開発のための多施設共同臨床研究」の採択を受け、それぞれ研究班長として、小児がん治療の安全性と患児の治療後QOLの向上を目指した基礎医学研究、および基礎研究と直結した臨床研究を全国規模で展開している。世界における糖尿病患者は3億7千万人にもおよび、我が国でも糖尿病あるいは糖尿病が強く疑われる人の数は2千万に達している。さらに、高血糖・インスリン抵抗性を有する2型糖尿病患者におけるアルツハイマー型認知症の発症リスクが高いことも知られているが、2型糖尿病患者でのアルツハイマー型認知症発症リスクの高い原因は未だ不明のままである。我々は、糖尿病において組織間質液pHが低下し、この組織間質液pH低下がインスリン抵抗性発症の原因であることも世界で初めて明らかにした。現在、我々は、糖尿病における組織間質液pH低下、およびアルツハイマー型認知症発症メカニズムの解明を、特にミトコンドリア機能に注目し、研究を進めている。さらには、食生活習慣改善による腸管をはじめとする、各種臓器における種々のイオン・糖・脂肪酸輸送タンパク質の機能発現調節を行なうことにより、組織間質液pH制御を介した糖尿病・アルツハイマー型認知症発症予防法の開発にも取り組んでいる。これらの研究に加えて、糖尿病・アルツハイマー型認知症の非侵襲的早期診断機器開発も行なっている。これらの研究成果により、糖尿病・アルツハイマー型認知症の非侵襲的早期診断および予防が可能になる日も近いと思われる。糖尿病での間質液pH低下により引き起こされる神経機能の低下およびアルツハイマー型認知症発症機構行動リズム解析ユニットと体内時計リアルタイムイメージングによる包括的概日リズム研究当研究室では体内時計の研究に取り組んでいる。シフトワーカーだけではなく、社会環境の変化によって、多くの人たちが不規則な生活を送るようになった。これは、直ちに何か特定の疾患につながる訳ではないが、様々な疾患リスクの上昇につながることがわかってきている。特に子供たちの心身の健康に影響があるという可能性が指摘されており、体内時計を社会環境の乱れからどのように守り、整えて行けば良いのかを基礎的なメカニズムからトランスレーショナルまで、体系的に研究を展開している。最近の成果として、胚性幹細胞(ES細胞)を活用した独自の解析系を開発し、体内時計の発生過程を明らかにした一連の研究は、世界初の独創的研究として評価されている。この研究によって細胞分化の最初のスイッチであるDNAメチル化制御など、エピジェネティック制御が、体内時計の発生に重要であることを発見し、細胞分化と体内時計の発生が切っても切れない密接な関係にあることが示された。今後は、子どもの心身の発生発達と体内時計との関連や、エピジェネティック発がんなどの新たな概念を、体内時計の視点で斬るといった、体内時計研究のフロンティアに分け入って行こうと考えている。11