ブックタイトルNews&Views 創刊号 vol.1 Jan, 2015

概要

News&Views 創刊号 vol.1 Jan, 2015

R esearchViews京都府立医科大学で進めている世界的にも注目度の高い11の研究について、それぞれ研究室の代表者よりご紹介させていただきます。企業と展開してきた。中でもRB再活性化スクリーニングと名付けたがん分子標的薬のスクリーニング系をJT医薬総合研究所や中外製薬に提供し、共同で新規MEK阻害剤trametinibや、新規RAF/MEK阻害剤CH5126766をそれぞれ見いだした。このtrametinibは、進行性BRAF変異メラノーマ患者に対する治療薬として欧米他で承認された。その結果、旧来の抗がん剤による奏効率が約5％であったのに対し、trametinibとBRAF阻害剤dabrafenibを併用することにより、奏効率76％（完全奏効率9％）にまで改善した。メラノーマは欧米では日本に比して10倍近い頻度で発生することに加え、治療法を抜本的に変えうる成果が得られたことから、trametinibはBritish Pharmacological Societyから2013年のDrug Discovery of theYearに選ばれた。現在は、がん分子標的薬の開発だけでなく、新規診断法や予防法の開発も精力的に行っている。MEK阻害剤trametinib（商品名Mekinist）の錠剤エピジェネティクスの化学制御による創薬研究医薬品化学教授鈴木孝禎エピジェネティクスの化学的制御により疾患の治療が可能となる残基のアセチル化、メチル化が重要なエピジェネティクス機構の一つであることが明らかにされてきた。また、エピジェネティクスの異常は、がんや神経精神疾患などの疾病に関与することも報告されている。したがって、エピジェネティクスをコントロールする化合物は、エピジェネティクス研究のためのツールとして利用することもでき、抗がん剤などの治療薬として応用することも期待できる。そこで、我々の研究グループでは、エピジェネティクスのケミカルコントロールを行う小分子化合物の創製研究と、その応用研究を行ってきた。これまでに、エピジェネティクスを制御する重要な酵素であるヒストン脱アセチル化酵素や、ヒストン脱メチル化酵素のイソ酵素に対する特異的阻害薬を世界に先駆けて見出し、それら阻害薬が抗がん剤や抗うつ薬として有用であることを示してきた。現在、これらの研究成果を基に、がんや神経精神疾患などの難治性疾患の根本治療を可能にするエピジェネティクス制御化合物の開発を展開している。光分子イメージングによる診断支援システムの開発細胞分子機能病理学教授髙松哲郎に有効であり、現在CTやMRIの画像が用いられている。加えて、術中に特異的光分子イメージングを行うことができれば、より良い予後やQOLを得ることが可能になる。ただ新しい分子プローブをヒトに直接使用するには多くの困難が立ちはだかっている。我々はその現状を打破するため、体内に元々存在する蛍光分子や、ラマン散乱を用いたイメージングを提案している。●リンパ?節転移イメージング：5-アミノレブリン酸(5-ALA)は、正常細胞では蛍光を認めないヘムにすばやく代謝されるが、腫瘍細胞では赤い蛍光を持つPpIXが蓄積する。我々は5-ALAを利用してリンパ節転移を高い正診率で検出できる機器の実用化を進めている。（医工連携事業化推進事業）●ラマン?散乱イメージング：光を物質に照射するとその一部は散乱する。ラマン散乱は異なった振動数を持ち、そのシフトは物質を構成する分子構造に固有であるため、ラマンスペクトルを解析することにより分子の同定が可能である。すなわち、生きた細胞・組織中に存在する分子の構造やその変化を非破壊・プローブ無しで解析可能であり、無標識での心筋梗塞巣や末梢神経の検出システムを開発している。（総合特区推進調整費）DNAの塩基配列に依存しないで遺伝子の発現を制御する機構は、エピジェネティクスと呼ばれている。最近の研究により、DNAのメチル化やヒストンリシン画像誘導手術は、対象が複雑な構造を持つ場合や、より正確さを求める場合ヒト大腸癌リンパ節転移の可視化10