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株式会社メディネットと共同研究契約を締結並びに特許共同出願

キメラ受容体(BAR)を遺伝子導入した免疫細胞(BAR-T細胞)による特異的B細胞除去による新たな治療法開発に着手

 京都府立医科大学では、株式会社メディネットと自己中和抗体産生に起因する病態を対象とした、新しいキメラ受容体(B細胞抗体受容体:BARと呼びます)を遺伝子導入した免疫細胞による特異的B細胞除去法の実用化に向けた共同研究契約を締結し、本技術に関する特許を共同出願いたしましたのでお知らせいたします。
 ライソゾーム病(注1)や血友病 (注2)は、分解酵素や血液凝固因子の遺伝的異常によりそれらが体内で機能しないことが原因で発症する疾患で、治療法として機能していない分解酵素や血液凝固因子を体外から補充する補充療法がおこなわれています。しかしながら、補充療法を続けると補充した分解酵素や血液凝固因子に対する中和抗体が産生され、補充療法が効果を示さなくなることがあります。また、生体機能に重要な役割を果たしている酵素等の蛋白質に対して自己中和抗体が産生されることにより発症する自己免疫性疾患(尋常性天疱瘡(注3)など)もあります。
 京都府立医科大学大学院医学研究科人工臓器・心臓移植再生医学講座五條理志教授と循環器・腎臓内科学星野温助教は、上記の病態に対して、中和抗体を産生するB細胞を特異的に除去することにより治療可能と考え、新たなキメラ受容体(BAR)の遺伝子をT細胞に導入したBAR-T細胞の開発を行い、有効な特異的B細胞除去が可能であることを確認されました(注4)。
 この研究により、ライソゾーム病で酵素補充療法を行いながら、中和抗体のために治療効果が減弱もしくは消失した病態を解消し、酵素補充療法の有効性を復元しうると考えられます。また、BAR-T細胞は、多くの自己免疫性疾患に応用可能であり、新しい治療手段になりうるポテンシャルを有していると考えられます。
 
【用語説明】
注1 ライソゾーム病
細胞には、生命活動によって生じた老廃物などを分解するライソゾームと呼ばれる小器官があります。ライソゾームの中では酵素と呼ばれる蛋白質が老廃物を分解し、無毒化しています。しかし、遺伝子の異常により酵素が作れなくなったり、酵素の機能が低下したりすると、老廃物が分解できずに蓄積していき、細胞の機能が低下し、病気となる場合があります。これらの病気をライソゾーム病と呼びます。ライソゾーム病は、原因となる酵素によって、ファブリー病、ゴーシェ病などに分類されます。
 注2 血友病
人には、けがをすると、傷口で血液が固まって、出血を止める機能があります。血液が固まるのは、血液中に存在する血液凝固因子の働きによるものです。しかし、遺伝子の異常により血液凝固因子が作れなくなったり、機能が低下したりすると、出血が止まりにくくなります。これを血友病と呼びます。
 注3 尋常性天疱瘡
免疫系が皮膚の上層に含まれるタンパク質を誤って攻撃することで発生し、様々な大きさの水疱が皮膚、口の粘膜、性器、その他の粘膜に急に多数発生する、まれな重度の自己免疫疾患です。
注4 特許出願済
【研究者情報】
京都府立医科大学大学院医学研究科 人工臓器・心臓移植再生医学講座 教授 五條 理志
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