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【論文掲載】漢方便秘薬による腸の水分分泌メカニズムを解明—新たな慢性便秘薬の開発が進むと期待—

概要

■漢方便秘薬に含まれる多数成分の内の腸からの水分分泌を増やす主要生薬成分を発見

■漢方便秘薬の作用メカニズムを解明

■新たな慢性便秘薬の開発につながると期待

慢性的な便秘は一般的な胃腸障がいであり、日々の生活に深刻なストレスを与えます。便秘だと感じている人は、高齢者では約10%にも達し、超高齢社会を迎えた日本において慢性便秘症患者の増加が予想されます。そのため、便秘の解消のために有効な便通改善成分を持つ薬の開発が望まれていました。日本で広く用いられている漢方便秘薬は、経験的に便通効果があり副作用も少ないことが知られておりましたが、腸の細胞における水分分泌調節には、どのようなイオンの出し入れを行って(水を動かして)いるか、どの穴(イオンチャネル)を通っているのか、その分子は分かっていませんでした。今回、福岡大学医学部の沼田朋大(ぬまた・ともひろ)講師、京都府立医科大学の岡田泰伸(おかだ・やすのぶ)特任教授らの研究グループは、ヒトの大腸上皮細胞で、漢方便秘薬に含まれる主要な生薬がカリウムとクロライド(塩素イオン)を移動させることによって腸の水分分泌を増やすことを発見しました。研究成果は、2019年10月29日に英国科学雑誌『Scientific Reports』オンライン版で掲載されました。
研究グループは、漢方便秘薬(緩下薬)に含まれている生薬成分マシニンがクロライドイオン(Cl)を、キョウニン、トウニン、ダイオウがカリウムイオン(K+)を、大腸上皮細胞からそれぞれ並行してKCl流出させることで腸の水分分泌作用を発揮することを発見しました。
沼田朋大講師は「これまで経験的に用いられてきた漢方便秘薬の作用に科学的で客観的な証拠を示すことは、多くの疾患の治療・予防法に寄与するものとして期待されます。さらに今回の研究成果から、Kイオンチャネル活性化を促す生薬は、高血圧症、気道過敏症、勃起不全、てんかんの治療薬として、Clイオンチャネル活性化を促す生薬は、心筋梗塞、気管支炎、肺炎の治療薬としても期待できます。新たな生薬の組み合わせによる新しい漢方薬の開発や生薬成分の分析結果を基とした創薬の開発が期待されます。」と話しています。
本研究成果は、日本学術振興会の佐藤(沼田)かお理特別研究員、京都府立医科大学の岡田泰伸特任教授(生理学研究所名誉教授)との共同研究によるものです。また、本研究は、独立行政法人日本学術振興会科研費基盤研究(C)18K06864および福岡大学推奨研究プロジェクト177009の助成を受けて行われたものです。
 
 
【論文名】
“Herbal components of Japanese Kampo medicines exert laxative actions in colonic epithelium cells via activation of BK and CFTR channels”
(漢方便秘薬に含まれる生薬による腸の水分泌機構の発見)
 
【掲載雑誌】
Scientific Reports
 
【研究者情報】
福岡大学医学部 生理学 沼田 朋大 講師
日本学術振興会 佐藤(沼田)かお理 特別研究員
京都府立医科大学大学院医学研究科 細胞生理学 岡田 泰伸 特任教授
 
報道発表資料はこちら

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