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がん免疫細胞制御学講座について

5. 基礎部門

 
私たちの講座では、がん免疫療法のみでなく、抗ガン剤治療、分子標的治療、ハイパーサーミア(温熱療法)の研究およびそれらの相互作用についての研究を行っています。
がん免疫療法の効果を上げるために、1)癌細胞に特異的な免疫細胞を生体内あるいは、生体外で誘導すること、2)癌組織の免疫監視機構を再構築すること、以上の2点に的を絞って研究を進め、そのために抗がん剤、分子標的、ハイパーサーミアがうまく応用できないかということを考えています。すなわち、集学的治療の基礎研究です。
たとえば、ハイパーサーミアで癌組織を加温すると、癌組織ではHeat Shock Proteinが誘導されます。実は、このHSPが免疫系に様々なステップで作用することが明らかとなりました。(下図)
 
Hyperthermiaによって誘導されるHSPのがん免疫増強のメカニズム
 
私たちのグループは、もともと消化器内科の臨床医が多いので、常に「この実験で得られる結果は、どのような形で臨床にフィードバックできるか、すなわち患者さんに役立てることが可能か」を意識して研究をするように心がけています。また、この意識を常に自覚するために、スタッフから大学院生まで、週の半分は、癌患者さんに接する機会が持てるよう、大学の出番を組んでいます。
たとえば、癌免疫外来では、適応があれば樹状細胞の腫瘍内投与を行い、樹状細胞に癌抗原を効率よく取り込ませることをする場合がありますが、この場合も、腫瘍組織内のHSPが多いと腫瘍内局所投与した樹状細胞がHSPにより成熟化し、所属リンパ節に移動してそこで効率的にナイーブT細胞に抗原提示をすることが基礎実験により明らかとしました。
 
Heat Shock Proteinは、がん免疫を増強するメカニズム HSPが未熟樹状細胞の成熟化を促進する
 
その一方で、私たちの研究室は、臨床医だけの集まりではありません。癌細胞の振る舞いや、ヒトの持つ免疫応答の不思議さに魅せられて、基礎研究をしている研究員もいます。この研究員たちは、免疫現象の神秘さや、癌細胞や癌間質のずる賢さを理解し、その中から、臨床につながるbreak throughを探っています。

基礎研究の進め方は、若い研究者が、実験計画案をまず独自で作成し、あらかじめ、指導教官と打ち合わせたのち、准教授と討論するようにしています。そのうえで、2週間に一度開催している免疫会議の場において、各自実験計画案をプレゼンし、外部からの基礎研究者も交えて討論した上で、実験に取り掛かります。また、この免疫会議の場で、実験成果を各自報告し、全員でその結果に対して討論します。

若い研究者(大学院低学年)は、はじめから基本的実験手技を充分に習得できているわけではありませんので、上級生やスタッフが教育しながら研究を進めることになります。このような共同作業から、グループとしての一つの大きなゴールを目指す集団としての一体感が養われています。

現在、取り掛かっている研究テーマは以下の通りです。
 
研究テーマ
進行癌患者に対する活性化リンパ球療法・温熱療法によるQOL改善効果の検討
がん細胞と樹状細胞の相互作用について
ナイーブT細胞移入による細胞免疫療法の検討(基礎実験)
ナイーブT細胞を担癌生体に細胞移入した場合の分化・増殖に関する検討(基礎実験)
進行癌患者に対する活性化リンパ球療法前後での免疫パラメーターの変動
DCワクチンの開発
Thermal rangeの温熱処理の樹状細胞に及ぼす影響
各種抗ガン剤による、PBMCの機能、分画に対する影響の検討
各種抗ガン剤による、CD3−LAK、ナイーブT細胞の機能、分画に対する影響の検討
ナイーブT細胞の効率的拡大培養方法の開発(ヒト)
進行癌患者に対する免疫療法の効果予測因子の発見
温熱療法の加温効率と患者サイド因子との関係についての検討
ナイーブT細胞を用いた細胞免疫療法併用温熱療法の有効性についての基礎的検討
消化器がん幹細胞をターゲットとした温熱免疫療法
進行消化器がん患者の悪液質における血中サイトカイン、アディポカインの検討
 
最後になりますが、学内・学外の医師および研究をこれから始めようと考えている皆さん、ぜひ「がん免疫細胞制御学講座」で、「がん」を根治する治療方法を開発する、という大きな目的に向かって共に研究しましょう。