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消化器内科学教室 ご挨拶

   
 吉川敏一

消化器内科学教室の理念

 われわれの消化器内科学教室では教室員全員の力で、特定機能病院、ガン拠点病院、教育・研究機関の強い自覚のもとに、ポピュラーな疾患から高度先進医療まで消化器全般に亘り臨床力を高めてきました。教室の伝統的精神『何でも呑みこむ』が脈々と継承された約650名の同門・先達の協力・支援のお陰で関連施設とも強固な連携のもとに、世界に通じる高度医療の提供と良医育成が教室の大きな理念であります。

 消化器の原点は、生命維持に必要な健全な消化吸収機構にあります。消化液の分泌、消化管運動、腸管免疫の相互作用が、食道から大腸までの消化管と肝胆膵の巧妙な臓器相関の上に巧みに調節され、消化器本来の生理的機能が作動しています。疾病治療に際しては、内視鏡医学、超音波医学、放射線医学を統合しながら適切な病態解析とその制御が、われわれ消化器内科医の役割であります。

 消化器疾患は時代とともに大きく構造変遷しております。従来主流であった疾患は診断・治療体系の確立とともに減少傾向にありますが、生活習慣に伴う消化器代謝疾患や消化器機能異常症の増加と消化器癌対策は重要な課題であります。癌死上位5位の内、肺癌を除く4つが消化器癌であります。胃癌、肝癌、大腸癌に次いで膵癌は上位5位まで増加し続け、その対策は国民レベルの大きな問題でもあります。
最先端のカプセル内視鏡とダブルバルーン小腸内視鏡の導入により内視鏡的アプローチでの全消化管(食道から大腸・肛門まで)の網羅と応用治療が可能な体制を整えています。消化管ポリープ病変に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)はもちろんのこと、早期癌に対する内視鏡的粘膜下切開剥離術(ESD)症例は年々増加し、高度医療を優しくより安全に行っております。一方、肝胆膵領域の超音波誘導下あるいは血管内治療(肝癌に対するPEIT、RFA、TACEや重症急性膵炎に対する持続動注療法)は近畿地区でも有数の症例数を誇っています。入院担当ベッド数67床での約半数は癌症例ですが、平均在院日数17日と年間入院患者約1,300名の責務と重みを持って教室員一丸となり日夜研鑽しております。

 今こそ、『強い臨床力に裏打ちされた研究、教育は大学に課せられた大きな使命と責務』であります。良医育成には消化器診断学、治療学の基本は勿論のこと、癌診療や難病治療を通じた全人的教育も重要です。日進月歩の消化器診療はMolecularから心を含めた全身までと多岐に亘るようになってきました。臓器別に診た消化器病から臓器相関的に診た消化器病への転換、Specialを目指しながらGeneralを診る、Generalを診ながらSpecialを習得する。この教育理念に基づき、全身から診た消化器と消化器から診た全身を統合的に病態解析しうる能力と適切な治療法の選択、すなわち切らずに治す消化器病と切らねばならない消化器病の見極めのできる消化器内科医の育成こそがわれわれの教室に課せられた課題であると認識します。

 『消化器を見つめる原点に戻り、たゆまぬresearch mindに根ざした臨床に強い心ある良医育成を最大課題に、臨床、研究、教育においてmolecularから全身までのIntegrated Gastroenterologyの実践』を教室の理念として歩み続けます。