図書館メールNews 第243号………………>>>>>2013.10.25. 発行   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  目次 ……………………………………………………………………………………………… 【1】--- コラム第7弾! 第5回 府立医大図書館蔵書『重訂解體新書』-“すい”の語源について -             / 病理学教室(人体病理学部門)柳澤 昭夫先生 ……………………………………………………………………………………………… 【2】--- ご不要な図書を大募集!〜リユース市開催にむけてのお願い ……………………………………………………………………………………………… 【3】--- 図書館ホームページがリニューアルしました。 ……………………………………………………………………………………………… 【4】--- 15分講習会を実施します(PubMed・医中誌Web・インパクトファクター) ………………………………………………………………………………………………      [ Book Review ]・・・編集後記にかえて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】--- コラム第7弾! 第5回 府立医大図書館蔵書『重訂解體新書』-“すい”の語源について -              / 病理学教室 (人体病理学部門)柳澤 昭夫 ……………………………………………………………………………………………… いつであったか記憶にはないが、『解體新書』が、府立医大図書館に展示されて いたのを目にした。言うまでもなく、『解體新書』は、オランダ渡りの解剖書 ター ヘル アナトミア Anatomische Tabellen のオランダ語訳を訳した日本初の翻訳書と して有名である。『解體新書』があるのか、歴史のある大学だから古い本もあるの だろうと感心し、何の気なしに、パラパラめくり私の専門である膵臓が記載されて いるページの図譜を見ると図譜の説明では“月(にくづき)”に“屯”の“?”漢 字がもちいられていたが、本文中では現在用いられている“月(にくづき)”に “萃”の“膵”の文字が記されていた。以前、『解體新書』には、膵臓は“大機里 爾”と訳されているとどこかで読んだことが有り、どうしてこのような異なった漢字 が用いられているか疑問に思い、展示してある『解體新書』をよくみると、『重訂解 體新書』とあり、お粗末な話であるが、そのときこの本が『解體新書』の“重訂”で あることを初めて知った。この本は、文政9年(1826)発行、杉田玄白先生新譯、大槻 玄澤先生重訂とある。この『重訂解體新書』が、どのようにして作られたか興味をも ち検索すると、長崎大学・島根医科大学名誉教授土屋凉一先生が詳細に調べており、 杉田玄白が、弟子である大槻玄澤に命じ解剖書を訳し直させたもので有り、その翻訳 の正確さは、『解體新書』よりも数段も上であることを知り驚かされた。いいかえる と杉田玄白は最初自らが訳した『解體新書』が不十分なものであったことを充分に承 知しており、より正確な解剖書を求めていたことが解る。実際、この『重訂解體新書』 をよむと(自分の興味のある膵の項目のみであるが)非常に隙なく詳細に正確に記載 されていることに驚かされる。  『重訂解體新書』がどのように作成され出版されたかが解ったが、次の疑問は、こ の本で最初に気になった、『解體新書』で“大機里爾”と訳されていた膵の漢字が、 “月(にくづき)”に“屯”から“膵”となったかである。“大機里爾”は、原文に ”Groot Klier”とあることより、“Groot”は、“大”であり、“機里爾”は、なぜ、 この漢字を用いたかは不明であるが、原文の発音“キリール”に類似した漢字をあて はめたものとされている。その後、大槻玄澤は“キリール”を濾胞と訳し濾胞の集ま った者として“月(にくづき)”に“屯”の“?”を用いたとされている。また、現 在用いられている“膵”の漢字は宇田川元真が最初に用いたとされている。宇田川元真 は大槻玄澤の門人であり、大槻玄澤の用いた漢字を用いず門人であった元真が別な漢字 を用いた理由は興味がある所であるが不明であるとされている。いずれにしても両者が 用いた“すい”の字に用いられている“屯”、“萃”の漢字の意味には、前者が、 “たむろする、つらめる、あつまる"、後者が、“あつまる、あつめる、あつまり”で あり、“あつまり”が含まれている。”pancreas”の語源は、ギリシャ語で“pan- 全て “creas-肉”とされているが、部首”月(にくづく)“で、旁が“萃”よりなる“膵” の漢字は、“肉のあつまり”と訳されたことになり、よく考えられた漢字であることに 感心させられる。なお、“膵”の字は中国にはなく純然たる和製漢字であるとのことで ある。また、“すい”の漢字を“?”を用いて現在に至ったら、“すいぞう”は、 “とんぞう”と呼ばれていたのかなど想像することは楽しいことであるが、“?”の漢 字は、weblio辞書には”・音読み:シュン、 サイ、 スイ ・ 訓読み:ほおぼね ・ ピンイン:zhun1 ・ 対応する英語:gizzard of fowl, honest, sincere”とあること を指摘され、”すいぞう“と大槻玄澤はすでに呼んでいたかもしれないことが判明し、 疑問があったら、詳細に検索することの重要性を改めて認識させられた。  『重訂解體新書』を偶然に目にしたことで、いままで知らなかったことを知るきっかけ になったが、ここに記載したことは、前述した長崎大学・島根医科大学名誉教授土屋凉一 先生が詳細に“膵の語源について”として「胆と膵」に連載されており、興味をもたれた 方はそちらを一読していただきたい。 (土屋凉一,胆と膵 2001, Vol.22から、2012,vol.33) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】--- ご不要な図書を大募集!〜リユース市開催にむけてのお願い ……………………………………………………………………………………………… 昨年度大好評だった「図書のリユース市」を、今年度も開催しています。 開催にむけて、学内の皆さまからご提供いただける図書を大募集いたします。 ■・募集期限 : 平成25年11月2日(土)まで ・募集対象 : @ご不要な図書 Aジャンルは不問 B書き込み等のないもの □ 図書館カウンターにご持参ください。 通常の寄贈と区別するため「リユース市用」とお伝えください。 □ リユース市終了後、残った図書については図書館にご一任ください。 □ 詳細は図書館ホームページ「新着情報(2013/Sep/25)」をご覧ください。 □ ご不明な点などありましたら、下記までお問合わせください。 電話:212-5400(リユース市担当) ■ リユース市は10月21日(月)から11月5日(火)まで 附属図書館1階カウンター前にて開催中です。 どなたでもご自由にお持ち帰りいただけます。お気に入りの1冊を探しに ぜひお越しください! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】--- 図書館ホームページがリニューアルしました。 ………………………………………………………………………………………………     ◆ 図書館新着ニュースが【お知らせ】・【電子資料】・【トライアル】      の情報別になり、利用しやすくなります。 ◆ 図書館Webサービス申し込みの方法が新しくなりました。               ↓    http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/webservice/regist.html  リニューアルした図書館ホームページを是非、ご利用ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】--- 15分講習会を実施しています(PubMed・医中誌Web・インパクトファクター) ……………………………………………………………………………………………… 図書館の15分講習会は、文献検索で悩みを持つ皆様にマンツーマンで   PCを操作しながら講習を行うものです。   これまでに受講された方は、看護師、薬剤師、医師のほか、リハビリ   技師、言語聴覚士などの医療技師、研修医、教室秘書、事務職員などさまざま   ですが、ご好評をいただいています。 PubMed・医中誌Web・インパクトファクターからメニューを選んでいただけます。 データベースの特徴、ホームページへの行きかた、基本的な検索方法、文献PDF の入手まで、基本的な部分を、15分でまとめて説明します。 毎週月曜日に実施します。申込不要ですので、お気軽に図書館カウンターに お声かけください。お待ちしております。 ◆ 日時:平成25年7月9日〜10月の毎週月曜日         11:00 / 16:30 の2回      ※上記と異なる日程や時間を希望される方はご相談ください。 ◆ 場所:図書館カウンター周辺 ◆ 内容:医中誌Web、PubMed、インパクトファクターから選択して下さい。 ◆ 事前申込:不要 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ……………………………………………………………………………………………… [Book Review]・・・「潜水服は蝶の夢を見る」  (ジャン=ドミニックボービー 1998年 講談社) 詩情溢れる洒落たこの文章が、 左眼の瞬きだけで綴られているなんてとても信じられない。  著者はパリの出版界の花形だったが、突然の発病によりロックトイン・シンドロ ームという耳慣れない、過酷な後遺症が残った。病床から気が遠くなるような作業 を経て本書を残し、出版の二日後に亡くなったという。奇跡の一冊。 ( 第二閲覧室 所蔵 956/B ) (Y.K.)   トップページ:  http://booklog.jp/users/kpumlib この本のページ: http://booklog.jp/item/1/4062088673 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ………………………………………………………………………………………………  図書館メールNews  第243号 2013.10.25 発行(隔週金曜日発行)  編集・発行 : 京都府立医科大学附属図書館          library@koto.kpu-m.ac.jp          http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/          ………………………………………………………………………       (図書館メールNewsのバックナンバーはこちらから↓) http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/sougouannai/mailnews.html ………………………………………………………………………………………………