図書館メールNews 第288号………………>>>>>2015. 7. 24発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 目次 …………………………………………………………………………………………… 【1】--- 教員コラム第9弾! 第3回  「文献検索と図書館員」 外科学教室 内分泌・乳腺外科学部門 / 田口哲也 先生 …………………………………………………………………………………………… 【2】--- 平成27年度第2回企画展示 <スポーツを支える医学>展を開催 します!【予告】 …………………………………………………………………………………………… 【3】---【Henry Stewart Talks-The Biomedical and Life Science Collection】 トライアル中 …………………………………………………………………………………………… 【4】---【研究者オンライン辞書検索サービス】トライアル中 …………………………………………………………………………………………… 【5】--- 夏期休暇中の貸出期間延長について …………………………………………………………………………………………… 【6】--- 2016年図書館購入雑誌アンケート及び教室所蔵雑誌調査の実施について …………………………………………………………………………………………… [ Book Review ]・・・編集後記にかえて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】--- 教員コラム第9弾! 第3回  「文献検索と図書館員」         外科学教室 内分泌・乳腺外科学部門 / 田口 哲也 先生 ………………………………………………………………………………………………  研究者に限らず臨床医にとっても文献検索は重要である。1990年代後半、日本 でも医療はevidence based medicine (EBM)に基づいて実践すべきという考えが 盛んになり始め、その普及をはかるべく国の研究助成事業としてありとあらゆる 「診療ガイドライン」の作成が主に学会主導で開始された。自分の専門である乳 癌の診療もその流れに乗って2001年から「科学的根拠に基づく乳腺診療ガイドラ イン作成に関する研究」という厚生労働省の研究班が立ち上がり参加することに なった。  ガイドライン(GL)の作成にあたっては、基本的な作成法が踏襲されている。 それは組織されたGL作成グループがまずGLの使用者が誰かを検討、設定し、 clinical question (CQ)を立てることから始まる。それぞれのCQに対する回答 (推奨文:recommendation)を書き上げなくてはいけないのだが、その科学的根 拠になる文献を過去より漏れなく調べることが求められている。更に、妥当で十 分な文献検索を行ったかどうか第三者が検証できるよう検索式の掲載も必要とな る。  当初はインターネットを利用して、PubMedを使い、時にCochrane Databaseも参 考に、自分自身で keyword の組み合わせを変更しながら繰り返し検索してみた。 しかし、検索により絞られる文献数は絞り方が緩いと数百件に及び、絞り方が強 すぎると数件にも満たないということがよく起こった。自分自身は以前に遺伝性 (家族性)乳癌の研究班でお手伝いした経験から、疫学・予防グループに属しGL を作成することになった。GLにおけるエビデンスレベルの決定には Oxford EBM センターのものが使用されていたが、そこでのレベル1、2の高いエビデンスとは、 例えば薬物療法の無作為化比較試験(RCT)やそのメタ解析の結果により得られる エビデンスのことである。また、GLでは高いレベルのエビデンスが根拠となる推奨 文であることが望ましい。ところが例えば、遺伝性乳癌の遺伝子解析に関するCQ では検査結果だけの文献が中心でなかなか高いエビデンスのものが見つからない。 それでもどうにかこうにか、やや高い推奨グレードBを付けた「家族性乳癌家系の 女性にカウンセリングは有用か」のCQではわずかにRCTの論文を見つけることがで きた。しかし、最初に絞り込めた論文数は929件、そこからさらに検索を狭めよう とすると一気に3から4件にまで激減した。仕方なく929件のタイトルとアブストラ クトを読みなおし、無謀にも約250件に絞って構造化抄録(アブストラクトフォー ム)を作成した。だから、そのままでは締め切りに間に合わず、初回のGLの作成で はわずか三つのCQに対する推奨文しか作成できなかった。GL作りでは文献検索の素 人である自分が「見落としがないように」と緩く絞り込んで、沢山の文献を手当た り次第に批判的に吟味し、すべての研究方法と結果の構造化抄録を作って推奨文を 作成することはまったく無謀なことであったことを覚えている。  この反省を踏まえ、乳腺の診療GLの改訂ではより多くのCQを取り上げる必要もあ り、GL作りの経験豊かな図書館員の皆さんと協働することとなった。参加いただい たある医大の図書館員の方は、もちろん他のGL作りをすでに経験されていた。その 威力は絶大で推奨文の執筆者と図書館員がCQに対する共通の理解を持ちながら、そ こにそれぞれの視点を加味して生み出される検索式を使って文献収集することで、 より客観的で網羅的な検索が行え、絞り込みも適切で効率がよく、かなりグレード アップした改訂GLが作成可能であったことを良く覚えている。  ネット検索のなかった時代、毎週1度は大学の図書館に通って新着雑誌やインデッ クスメディクスを広げていたが、今は研究や論文執筆の文献検査ではほとんどがネ ットを使ってeasyに済ませていることが多いと思われる。もちろん、今でも文献の 全文を手に入れたい時は大学の図書館が雑誌の出版社と契約していなければ時間も お金も掛かるであろう。GL作りで再び文献検索の難しさを経験したひとりとしては、 目的に合った適切な文献を無駄なく検索するためにも図書館と図書館員の重要性を 改めて考えてみたいと思っている。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】--- 平成27年度第2回企画展示 <スポーツを支える医学>展を開催     します!【予告】 ……………………………………………………………………………………………… 平成27年度第2回企画展示 <スポーツを支える医学>展を開催します。    ■期間:平成27年8月1日(土)〜8月29日(土)  ■場所:附属図書館1階 特設展示コーナー  テニスの錦織選手や女子サッカーのなでしこジャパンなど、注目されるアスリ  ートの活躍。社会の健康志向ともあいまって、実践者の裾野は広がり、2020年  東京オリンピックにむけてますます高まる勢いをみせています。  今回は<スポーツを支える医学>をテーマに、スポーツ外傷の治療や予防から  身体能力の強化に関わる本などをご紹介。  夏休みの長期貸出を利用して、スポーツの視点から医科学の理解をじっくり 深めませんか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】---【Henry Stewart Talks-The Biomedical and Life Science Collection】 トライアル中 ……………………………………………………………………………………………… 1500点以上にわたる研究者のプレゼンテーションを視聴できます。 ノーベル賞受賞者など、各分野第一線の研究者をエディターとし、Basicから 最新情報へ展開するシリーズが90コース以上提供されています。 学生向けのUnder graduateも提供。英語字幕も表示されます。 ◆URL : http://www.hstalks.com/access ◆ユーザーガイド(PDF)はこちらのURL へリンクしてください。  ↓ http://www.usaco.co.jp/lancelot/common_files/images/public/HST_New_Viewer _Training_2014.07_JPN.pdf ◆トライアル期間 : 2015/12/31まで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】---【研究者オンライン辞書検索サービス】トライアル中 ……………………………………………………………………………………………… 「医学英和辞典」を含む、研究者の17辞書+大辞林をインターネットで一括 検索できます。 ◆URL http://kod.kenkyusha.co.jp/ ◆ID,パスワードはパスワード一覧に掲載しています。 (一覧を開くにはPWが必要です。図書館へお問い合わせください) ◆トライアル期間 2015/9/30まで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【5】--- 夏期休暇中の貸出期間延長について ………………………………………………………………………………………………  附属図書館ではただ今図書の貸出期間を延長中です。 詳細は次のとおりです。どうぞご利用下さい。  ◇延長対象資料: 単行書のみ  (雑誌・ビデオ・CD-ROMなどは通常どおり)  ◇貸出期間:  8月28日(金)までに借りた場合、9月11日(金)が返却期限となります。  8月29日(土) 以降は通常どおり2週間です。  ◇なお、教養図書室では7月1日(水)から8月27日(木)まで、単行書の貸出  期間を9月11日(金)までとしています。あわせてご利用ください。   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【6】--- 2016年図書館購入雑誌アンケート及び教室所蔵雑誌調査の実施について ……………………………………………………………………………………………… 2016年に購入する雑誌を選定する際の参考とするため、各教室あてに図書  館購入雑誌アンケートと教室所蔵雑誌調査をお願いしています。 限られた予算内で、少しでも役に立つ雑誌を皆さんに提供できるよう努力  したいと考えていますので、ご協力をお願いします。  ◇ 配布資料 ・2016年図書館購入アンケート及び教室所蔵雑誌調査の実施について(依頼) ・2016年図書館購入雑誌アンケート記載要領   ・回答用紙1〜4 ・2015年教室所蔵雑誌調査票記載要領 ・2015年教室所蔵雑誌調査票(新規作成用)   ◇ ダウンロードについて ダウンロードはこちらをご利用ください。【学内限定】  http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/gakunai/enquete/2016.html   ダウンロード出来る用紙 ・2016年図書館購入アンケート及び教室所蔵雑誌調査の実施について(依頼)   ・2016年図書館購入雑誌アンケート記載要領 ・回答用紙1 医学科用 ・回答用紙1 看護学科用 ・回答用紙2 ・回答用紙3 ・回答用紙4 ・2015年教室所蔵調査記載要領 ・2015年教室所蔵雑誌調査票(新規作成用) ◇ 提出期限: 平成27年 7月 31日(金) ◇ 連絡先 : 雑誌担当 河原(かわはら) libseiri@koto.kpu-m.ac.jp ……………………………………………………………………………………………… [Book Review] 「MeSH入門」(情報科学技術協会 2013 シソーラス研究会著)  PubMedを検索すると、データにはMeSHというキーワードが10個以上付与されて  います(新しい情報にはまだ付与されていません)。これが、NLM(米国国立医  学図書館)の作成した医学用語シソーラス、MeSH(Medical Subject Headings)  です。   シソーラスとは、さまざまな用語をできるだけ統一して使えるようにまとめ  られた用語集のことで、PubMed検索ではこのMeSHが自動的にマッピングされ、  漏れが少ない検索ができるしくみになっています。   現在MeSHは27,000語以上の医学用語からなり、毎年改訂されていますが、最  初に作成されたのは1960年です。その頃にはまだ、インターネットもPubMedも  ありませんでした。当時の研究者は主に、PubMed(MEDLINE)の前身であるIndex Medicusという紙の雑誌を使って文献を検索したのですが、MeSHはこの資料の中  で見出し語として使用されていました。   その後、文献情報がコンピュータで検索できるようになり、MeSHもPubMedを  はじめとする様々なデータベースで使われるようになりました。今回ご紹介する 「MeSH入門」では、MeSHの構造や特徴、MeSHを使った検索方法などを紹介してい  ます。MeSHについて詳しく知りたいと思った方はぜひ手にとってみてください。                                                (第2閲覧室490.7/T) (Y.Y.)    トップページ:  http://booklog.jp/users/kpumlib       この本のページ: http://booklog.jp/item/1/4889510508 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ………………………………………………………………………………………………  図書館メールNews 第288号 2015. 7. 24発行(隔週金曜日発行)  編集・発行 : 京都府立医科大学附属図書館  library@koto.kpu-m.ac.jp  http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/  ………………………………………………………………………  (図書館メールNewsのバックナンバーはこちらから↓) http://www.kpu-m.ac.jp/k/library/sougouannai/mailnews.html ………………………………………………………………………………………………