話題0021 エホバの弛緩出血Hb2.7
今搬入されたエホバの証人の患者です。他院で出産後弛緩出血を起こし、搬入されました。内腸骨エンボリで一応止血しましたが、Hb2.7です。完全鎮静下に低体温、とも考えたのですが、意識清明で循環動態も安定、BEは-4.7、lactate51mg/dlです。
とりあえず循環呼吸を監視しながら経過観察としたのですが、fluorocarbonについての情報をお持ちの方、いらっしゃいましたらレスポンスよろしくお願いいたします。
リコンビナントもエホバの証人の方はNOなのでしょうか?
出血はコントロールできているようですが、例えばエリスロポイエチンやG−CSFが使えれば、
低体温にしていても骨髄抑制は防げるような気がしますが、、、
リコンビナントは基本的にはヒトから取ったものではなく、ヒトと同じ遺伝子配列から作り出したもの、と捉えるわけには行かないのでしょうか、、、
越智さん、早々のレスポンスありがとうございます。
>1)この病状では輸血できるかどうかが救命の大きな要因になることは
>明白だと思います。病院長あるいは集中治療部長などから、輸血の承諾
>を得るべく再度説得をしていただく。他の信者の意向はともかく、患者
>の直接の家族から輸血に関するインフォームド・コンセントを取り付け
>ることはできませんでしょうか?
札幌医大病院ではエホバの証人の患者さんに対して、統一した対応をとることを可能にするマニュアルが作成されています。一応それに基づいて患者さん本人(やや頻脈ですが取り乱さずしっかりと応対されています。宗教に基づいた信念と言うのは強いものですね)、御主人(非エホバです)に御説明させていただきました。御両親は判断できる状況にないようなので御説明を断念いたしました。また、越智さんの御指摘のような教会の偉いヒト、のような方がいらっしゃいましたが直接御説明はいたしませんでした。この患者さんは小さいお子さん(今回の子供も含め)もいらっしゃいますし、御主人と御両親から説得すれば、と思ったのですが、取り付くシマがない、という感じです。
>2)現在、出血のコントロールができているか? 出血中であるか?
>DIC(播種性血管内凝固症候群)を併発しているか? などが、重要であ
>ると思います。可能であれば、凍結血漿、トロンビン製剤についてだけ
>でも投与許可をとりつけることができれば、出血傾向に対する重要な治
>療手段になると思います。
>
出血のコントロールは出来ているようです。子宮内からコアグラが排出されますが、溜っていたもののようで、Hb(BGAのHbです)2.7から2.6になった程度です。BE、lactateは変化なし。血液由来製剤は5%、25%アルブミン、グロブリン製剤などはOK(要はこれらは薬、という認識)だそうです。もちろん信者個人の判断にゆだねる範疇らしいのですが。
>3)フロロカーボンについては、どなたかから問い合わせ先をお教えい
>ただけるものと思います。正式に認可された薬剤ではない訳ですが、至
>急入手することと、家族から投与の許可を取り付けることを並行して進
>める価値があると思います。輸血の承諾が得られないならば、フロロカ
>ーボンの使用は許されるべきだと思います。
>
>*人工呼吸などをしていればなかなか実施しにくいですが、anemic
>hypoxiaを切り抜ける1手段として、高気圧酸素治療(の併用)もありう
>るかと思います。
>
HBOについても考慮してみましたが、その手間等を考えた場合、人工呼吸下に低体温維持を選択するものと思われます。
ちなみに今回の患者さんは先に話題となった「免責カード---私は輸血を拒否しますカード」をお持ちになっていました。
皆様からの御意見をお待ちしております。
At 0:27 AM 98.3.14 +0900, FALCON wrote:
>リコンビナントもエホバの証人の方はNOなのでしょうか?
>出血はコントロールできているようですが、例えば
>エリスロポイエチンやG−CSFが使えれば、
>低体温にしていても骨髄抑制は防げるような気がしますが、、、
>リコンビナントは基本的にはヒトから取ったものではなく、
>ヒトと同じ遺伝子配列から作り出したもの、と捉えるわけには
>行かないのでしょうか、、、
>
EPOは投与していますが、多分効果が現れてくるのは数日かかると思うので、それまで持つ様なら大丈夫かな、と思っていますが、さしあたっては今日明日で酸素デリバリーの低下による臓器傷害を来たすことが不安です。一応、酸素ディマンドを低下させるための、完全鎮静人工呼吸下の低体温維持を導入する基準として、血中lactateの上昇、transaminase、amylase、CPKなどの組織逸脱酵素の上昇を目安としよう、と考えています。しかし再出血したらどうするんだろう。なんてことは考えないようにしよう。
氏家@宮崎医大救急医学です。
七戸先生、大変ですね。
>EPOは投与していますが、多分効果が現れてくるのは数日かかると思うので、それま
>で持つ様なら大丈夫かな、と思っていますが、さしあたっては今日明日で酸素デリバ
>リーの低下による臓器傷害を来たすことが不安です。一応、酸素ディマンドを低下さ
>せるための、完全鎮静人工呼吸下の低体温維持を導入する基準として、血中lactate
>の上昇、transaminase、amylase、CPKなどの組織逸脱酵素の上昇を目安としよう、と
>考えています。しかし再出血したらどうするんだろう。なんてことは考えないように
>しよう。
臨床医としての感覚的なもので判断するならば、
わたしであれば、意識があり組織低酸素症状や心不全などが出ていないのならこのまま様子を見ます。
低体温にして出血傾向が出て医原性の合併症を起こす方が恐いです。
患者の納得が得られない輸血は勿論できないでしょう。
最近流行のEBM的アプローチでは、
エホバ、貧血、エポなどのキーワードで過去の論文をさがし、その中から結論を見出すことになるでしょう。
役に立たないコメントで申し訳ありません。
>氏家@宮崎医大救急医学です。
>
>七戸先生、大変ですね。
>
>臨床医としての感覚的なもので判断するならば、
>わたしであれば、意識があり組織低酸素症状や心不全などが出ていないのならこのま
>ま様子を見ます。
>低体温にして出血傾向が出て医原性の合併症を起こす方が恐いです。
>患者の納得が得られない輸血は勿論できないでしょう。
>
>最近流行のEBM的アプローチでは、
>エホバ、貧血、エポなどのキーワードで過去の論文をさがし、その中から結論を見出
>すことになるでしょう。
>
Hb2.4-2.1まで低下しました。出血そのものの量は多くありません。大体、Hb2.7から2.4まで低下するにはからりの量の出血が必要となるはずですよね。外観的に、あるいは安定した循環動態から見ても、幸運なことに止血されていると思われます。膣部ガーゼも完全に乾燥しています。(もちろんエンボリ-コイルですから再疎通は十分考えられますが)不思議なことに血小板は昨日で30万、本日でも15万あります。あまり採血検査が出来ませんが。Hb低下は希釈なのでしょうか。
色々検索してみたところ、臓器傷害の分水嶺はHb2.0程度のようです。もちろんその時点での心機能、volume replacement、貧血に陥った時間経過、外傷かどうか等によって異なるとは思いますが。ただほとんどの症例で手術に継続して集中治療を行っているため、完全鎮静下調節呼吸であるようです。本当はSvO2を基準にしてO2ディマンドとデリバリーとのバランスを評価したいところですが、SGを入れることなど滅相もないことなのでやはり血中lactateが指標となるかな、と思います。
賛否両論あるとは思いますが、一晩患者さんや家族が(医者も)考える時間が持てたことを幸運と思い、完全鎮静人工呼吸下の低体温(mild)維持を導入することになりそうです。氏家先生のおっしゃっていることが当然一番の問題点になるとは思いますが、ちょっと呼吸が苦しくなってきたようです。
御意見お待ちしております。
At 11:17 AM 98.3.14, Y. Shichinohe wrote:
> 色々検索してみたところ、臓器傷害の分水嶺はHb2.0程度のようです。もちろんそ
> の時点での心機能、volume replacement、貧血に陥った時間経過、外傷かどうか等に
> よって異なるとは思いますが。ただほとんどの症例で手術に継続して集中治療を行っ
> ているため、完全鎮静下調節呼吸であるようです。本当はSvO2を基準にしてO2ディマ
> ンドとデリバリーとのバランスを評価したいところですが、SGを入れることなど滅相
> もないことなのでやはり血中lactateが指標となるかな、と思います。
> 賛否両論あるとは思いますが、一晩患者さんや家族が(医者も)考える時間が持て
> たことを幸運と思い、完全鎮静人工呼吸下の低体温(mild)維持を導入することにな
> りそうです。氏家先生のおっしゃっていることが当然一番の問題点になるとは思いま
> すが、ちょっと呼吸が苦しくなってきたようです。
>
> 御意見お待ちしております。
橋本@京都府立医大集中治療部です。
七戸先生、ご苦労様です。
血中lactateモニターは重要だと思います。
それに加えてもし人工呼吸下に管理されるとなると一番酸素消費量の多い心臓と脳のモニターを考えたいです。
個人的意見ですが12誘導心電図でSTの変化を24時間監視するというのはどうでしょうか。
Hb2g-2.4gとなると血液100ml中の酸素量は、Hbに約3mlと溶存酸素0.9ml(酸素濃度60%
)ですからFiO21.0に一時的に上げて得られる溶存酸素(この場合は0.6mlのアップ)
も馬鹿にはできないかも知れません。(それにしても苦しい、、)
また老婆心とは思いますが、完全鎮静人工呼吸への導入において心拍出量が一時的に
でも低下する事態は避けたいですね。
> ちなみに今回の患者さんは先に話題となった「免責カード---私は輸血を拒否します
> カード」をお持ちになっていました。
私どもの病院でもこれまで免責証書に医師が同意のサインしたことがありました。しかしこれで刑事責任を回避できるわけではないという理由で今後は原則的にサインをしないことになりました。逆に輸血の最終的な判断は医師が行うという同意書に入院時にサインがない場合は診療しないと言うことにもなったのです。もちろんこれでは今回のような緊急時のケースには対応しきれないことは明白です。事務との対応等を考えるなら、待てるものなら月曜日(明日)まで待つのも手かも知れません。
では
At 7:44 AM 98.3.15 +0900, Satoru Hashimoto wrote:
>血中lactateモニターは重要だと思います。
>それに加えてもし人工呼吸下に管理されるとなると一番酸素消費量の多い心臓と脳の
>モニターを考えたいです。
>個人的意見ですが12誘導心電図でSTの変化を24時間監視するというのはどうで
>しょうか。
>Hb2g-2.4gとなると血液100ml中の酸素量は、Hbに約3mlと溶存酸素0.9ml(酸素濃度60%
>)ですからFiO21.0に一時的に上げて得られる溶存酸素(この場合は0.6mlのアップ)
>も馬鹿にはできないかも知れません。(それにしても苦しい、、)
>また老婆心とは思いますが、完全鎮静人工呼吸への導入において心拍出量が一時的に
>でも低下する事態は避けたいですね。
橋本先生、ありがとうございます。
なにぶん、少しでも出血の危険があるような、侵襲的なモニターが出来ないもので困っています。鎮静には何を薬剤として使おうか、という議論があったのですが、心拍出量との関係で、けっきょくミダゾラムを用いました。やっぱりバルビチュレートが、いやプロポフォールの方がという方、御意見をお待ちしております。心拍出量に関してはUCG、酸素消費量(全身の)は呼気分析代謝モニター(Deltatrack)を使っています。dobutamin4-5γ投与下で7-8l/minというところです。ただ、健常時の数字がないため、増えているのか減っているのか。SvO2の測定は中心静脈カテ(動脈ラインとこれだけは恐る恐る入れました)からの採血で1日1回測定して代用することにしています。動脈血ガス分析と最小限の検査などで一日の採血量は3-3.5mlといったところです。
酸素運搬量の保持に関しては橋本先生の御指摘のように溶存酸素もバカに出来ないと考えています。34℃まで体温を下げる事によって生じる酸素解離曲線の右方移動を、mildhypercapnia、pHを若干下げる事によって左方移動に修正し、さらに酸素肺傷害を起こさない程度のFiO2(0.5にしたのですが----)によって溶存酸素とともにSaO2を保持するようにしています。
また若干議論のあったEPOですが、状況として高度の貧血があってかつ骨髄障害がなく、さらに腎が健常であれば、外因性に投与するEPOの何十倍ものレベルにすでに達している事が確実であまり意味がないかも知れない、と血液内科、腎臓内科医からいわれ、ただし血中濃度を判断できず、さらに他に頼るもののない状況では、通常使用量の何倍かを投与するのでなければあまり効果が望めないのではないかといわれました。でも免罪符的に使い続けています。
しかしこれらの保険外診療の分は誰が払うんだろう。本人の信教の自由と言っても治療を修飾させているのですからねえ。輸血4-5単位していれば今日にもICUから出られるのに。
広島市民病院麻酔集中治療科の多田恵一です。先日橋本先生のお誘いで、CCNに加えていただくことが出来ました。おそらく、メンバー中最古参というところでしょうか。
札幌の七戸先生の、息詰まるようなエホバの患者さんの集中治療の経緯をただ、固唾を呑んで、みつめているばかりです。打てる手は、すべて出尽くしているようにも思いますが、難しいでしょうけどOHPしか残ってないのかしら。
それにしても、七戸先生は、この患者さんと無輸血承諾の覚え書きを交わしたのでしょうか??それとも、最大限の努力の最中であり、先日の高裁判決じゃあありませんが、最後は輸血の選択枝を留保されているのですか。
覚え書きをかえわされていないのなら、輸血すべきだと思いますがどうでしょう。僕なら輸血します。エホバへの僕の理解の浅さ故の意見です。つまらない意見ですみません。輸血せずして死にゆくかもしれない患者さんの姿を僕は容認できません。最大限の無輸血への努力で多とすべきではないでしょうか
>しかしこれらの保険外診療の分は誰が払うんだろう。本人の信教の自由と言っ
>ても治療を修飾させているのですからねえ。輸血4-5単位していれば今日にもICUから
>出られるのに。
> 札幌の七戸先生の、息詰まるようなエホバの患者さんの集中治療の経緯をただ、固
>唾を呑んで、みつめているばかりです。打てる手は、すべて出尽くしているようにも
>思 いますが、難しいでしょうけどOHPしか残ってないのかしら。
> それにしても、七戸先生は、この患者さんと無輸血承諾の覚え書きを交わしたのでし
> ょうか??それとも、最大限の努力の最中であり、先日の高裁判決じゃあありませ
>んが、最後は輸血の選択枝を留保されているのですか。
> 覚え書きをかえわされていないのなら、輸血すべきだと思いますがどうでしょう。
>僕なら輸血します。エホバへの僕の理解の浅さ故の意見です。つまらない意見ですみ
>ません。輸血せずして死にゆくかもしれない患者さんの姿を僕は容認できません。最
>大限の無輸血への努力で多とすべきではないでしょうか。
七戸先生、いつもご苦労様です。
最もdecision makingに迷う局面ですね。
この場合、札幌医大のマニュアルでどのような対応をすることになっているのでしょうか。あくまで患者の意志尊重でしょうか。あるいは最終的には担当医の判断を尊重することになっているのでしょうか。いままでの経過を伺っていると、患者の意志に従えということになっているようですね。
学問的には、輸血をしないという前提で、
1)人間はどこまで貧血に耐えられるか、
2)このような限界を越えた貧血?
への非輸血的組織酸素供給法などが、興味の持たれるところです。しかし、臨床的には、やはり多田先生の発言にあるように、輸血に踏み切るかどうかの判断が、緊急最大の問題点です。乳酸値が上がり始めてから対処して間に合うという保証はどこにもない訳ですから。
患者が信仰を守って死ぬ権利(魂が救済されると患者側は言っていると思いますが)を優先するか、医師の生命を守る義務・権利(positiveな意味での殺人者になることを避ける権利か?)を優先させるかの問題に帰着します。
また、このようなゆっくりとした貧血の進行であれば、患者のout comeとして死と生の間の植物状態としての出来上がりも十分考えられます。ほとんどのエホバの信者は、植物状態で生きながらえることについての可能性は教えられていないと思います。
結論として、私も多田先生のご意見と同じく、先生の立場であれば輸血すると思います。
先日の裁判結果のように、50万円払って法律的に済むのであれば、殺人者になるよりマシかなと思います。
いみじくも七戸先生が言って居られるように、このようなextraの高額医療費を支払う用意がエホバの患者側にはないのが現状です。
「輸血4-5単位していれば今日にもICUから出られるのに」、ICUを延々と占拠して他の重症患者の治療に支障を来すことを、エホバの神さんはどうお考えなのか聞いてみたいところですネ。まさか、エホバの信者だけが助かればいいなどとは言わないと思いますが。
(やや後半感情移入されて申し訳ありません。このところ毎週1人のペースでエホバの患者がやってくるので、ちょっとキレ気味なのであります)
七戸康夫先生,
第17回日本臨床麻酔学会シンポジウムで輸血拒否患者へ対応について勉強する機
会が有りました.
エホバの証人が最初から輸血拒否を掲げていなかったことを知り,私はこのシンポジウムで,この拒否に関しては安易に受け入れるべきではないとの立場で話を進めました.
日本では判例があるか存じませんが,合衆国には患者に依存する家族がいる場合,”
公共の孤児を防ぐ”ために裁判所が輸血を認める例も有るようです.
この患者さんに養育すべきお子様がいらっしゃるならば,この場合に当てはまると存じます.
オーストラリアでは輸血拒否を認めないそうです.
東京地裁の判決に続く高裁判決が出た今は,この問題について日本の医療のあり方を探るべき重要な時期に有ると思います.
先生だけではなく,病院全体で意思決定を行うようお勧めいたします.
阪大麻酔科・谷上博信(在米)です。長文です。
At 11:54 AM 98.3.15 +0900, Y. Shichinohe wrote:
> しかしこれらの保険外診療の分は誰が払うんだろう。本人の信教の自由と言っても
>治療を修飾させているのですからねえ。輸血4-5単位していれば今日にもICUから出ら
>れるのに。
この点に関して、先日麻酔MLへの小生の発言をCCNに転載させていただきます(繰り返しになる多くの麻酔科の先生、ごめんなさい)。
At 2:39 PM 98.2.22 -0400,
阪大麻酔科・谷上博信(在米)です。
(途中略)
(エホバ逆転勝訴の報道に関して)
小生が判決文を読んで感じたのは、「やっぱりファジーな説明はあかんのやなぁ」ということでした。結局、この例では、(裁判所の表現による)「絶対的無輸血」を主張する患者に対し、「相対的無輸血」で手術に望むという医療側の方針が、十分に説明されていなかったことのみが問題とされていると思います。
それと、裁判所の「絶対的無輸血治療に応ずるかどうかは、専ら医師の倫理観、生死観による。後記説明為務を負うことは格別として、医師はその良心に従って治療をすべきであり、患者が医師に対してその良心に反する治療方法を採ることを強制することはできない。」というのは、現場の医師にとって、とても「ありがたい」認識だと思いました。
ところで、この訴訟は上級審に行くんでしょうか?
もしこれで確定、ということなら、一つ注意するべき事があります。
それは、「エホバ」の人達が、この判例を「錦の御旗」にふりかざして、医療現場で無輸血手術を強要してくるだろうことです。つまり、判決の中身を無視して、「無輸血手術」を裁判所が容認した、という論法で迫ってくるのが目にみえるようです。彼らは横の連携が密なので、この判例を最大限利用すべく、組織的な対応をしてくることが予想されます。しかし、判決の中身は医師の裁量が十分認められたものであり、従来の治療方針を変えるものでないことはいうまでもありません。
しかし、インターネットで読んだ限りでは、新聞記事の趣旨は「エホバ」が勝った、というニュアンスであったように感じました。こういった記事のために、いつまでも「エホバ」のことが、一般市民からは「一部の宗教の信者だけの問題」という認識にとどまっていると思います。
私見では、「エホバ」は市民全体の問題です。つまり、場合によっては「エホバ」患者の無輸血診療が、一般市民に不利益をもたらしている場合もあります。このことを医療従事者として、市民に周知させる必要があるのではないかと以前から考えていました。
そこで、「エホバ逆転勝訴」の記事を契機に、先日在阪のラジオ番組に以下のような趣旨の投稿をし、放送されたことを報告しておきます(「無理な無輸血手術の市民への影響」という観点で投稿しました)。
(途中略)
留学までの約3年間、阪大付属病院で外科手術を受ける「エホバ」の患者さんに対する麻酔科の窓口として、私はこの方々とずっと交渉してきました。
そして、この問題が、一般市民の皆さんにとっても、決して他人事ではない、自分達の問題なんだと感じるようになり、その点につき皆さんに知っていただくべきだと感じた次第です。
問題点は以下の3点です。
1.一般の手術患者へのしわ寄せが無視できない
2.高額な医療費が健康保険の負担となっている
3.本来必要がない輸血が必要になってしまう場合がある、
一つずつ説明します。
1.一般の手術患者へのしわ寄せ
「エホバ」の患者さんの手術・術後管理を無理に無輸血で行い、長期間重度の貧血状態が続くと、たとえ救命できたとしても、腎不全他の臓器障害をおこしたり、術後出血や縫合不全といった合併症の確率が高くなったり、また手術後の回復が通常よりも遅れるために、入院期間が長くなったり、本来は必要がなかった集中治療室への入室が必要になったりします。
阪大病院のようなベッド数1000床規模の大病院でも、集中治療室は6床程度しかありません。このため集中治療室は常に一杯で、大きな心臓外科手術を受ける患者さんなどは、集中治療室への入室待ちのために手術が何週間も延期されることがあります。一般病棟も同様で、診療科によっては何カ月か先まで入院待ちの患者さんが待機しています。この状況で、「エホバ」の患者さんの無理な無輸血手術をおこなえば、本来集中治療室へ入るはずの重症患者が、ワリを喰って入れなかったり、手術そのものが延期になったり、一般病棟でも入院待ちの日数が長くなったりと、一般の患者さんへのしわ寄せはかなりのものになると思います。
2.高額医療費負担の問題
無輸血を強行するために生じる重症の急性貧血により、入院期間が長くなったり、通常は使用しない高価な薬剤を使ったり、集中治療室入室が必要になったりと、同じ手術の他の患者さんよりも随分医療費がかかってしまい、健康保険による負担も増大します。このような患者の希望・信条に基づいた治療は、歯医者さんで見栄えのよいセラミックの義歯を入れてもらうのと同じように、本来は保険診療の適応外、つまり、自費診療になるのではないかとおもうのですが、実際にはすべて保険診療扱いとなって、一般の市民の負担増となっています。
3.本来必要がない輸血が必要になってしまうことの矛盾
「エホバ」の輸血拒否は、あくまで宗教上の信条に基づくものであり、医学的根拠によるものではありません。そのため、手術前に一旦自分の血を採血して、手術時にそれを輸血し、他人の血液を使わない「自己血輸血」といった、現在多くの手術で行われるようになった輸血を避けるための手段も拒否します。「自己血輸血」は、手術前に2〜3週間かけて少しづつ自分の血を採血して貯蔵し、それを手術時の出血に対して投与するもので、これにより1,000〜2,000ccの貯血が可能で、言い換えると従来は同程度の輸血が必要であった手術でも、輸血の必要がなくなった、ということになります。こういった輸血回避のための工夫も、「エホバ」の患者さんは拒否するために、一般患者では輸血の必要性がない出血でも、生命や重要臓器に重大な影響を及ぼしたり、最終的には輸血を必要としてしまったりする可能性があります。つまり本来不要であった(供血による善意の)輸血が、輸血や他の処置を拒否したために逆に必要
になる場合があるのです。
以上、長々と「宗教上の信条に基づく輸血拒否」に対する一般市民への影響について記してきました。私自身は、患者さん個人の信条を尊重するのにやぶさかではないのですが、そのために生じる一般の患者さんの不利益も、もっと考慮されるべきだと考えています。他にも多くの問題点がありますが、この問題が我々みんなにとって「決してひと事ではない」ことを、是非とも御理解いただきたいと存じます。
以上のような趣旨を投稿いたしました。
以上です。
初めて発言する北見赤十字病院麻酔科の高橋広巳です。くだらない話です。
私も胸部外傷で両側血気胸、右主気管支損傷のエホバの証人をみたことがあり、その時は手術後のHbで4.0弱だったと記憶していますが、結局何の障害もなく元気になって帰っていきました。
エホバの証人の人たちは自家血輸血もだめだといっていますが、中心静脈カテーテルをいれて、ルートフラッシュを2回、同じシリンジでやったら自家血輸血と同じなのかな?
極度の貧血の人の動脈採血の時、貧乏性の私はよく最初に血をひいたシリンジの血を戻したりするんですけれど、これって完全に自家血輸血だよなー!とか、神様ってどんな些細なことでも見逃さないから、こんなことやったら患者さんの魂は救われないのかなあ?などとくだらないことことを考えてしまいました。
この考えは現在、思いついたのではなく胸部外傷のエホバの証人が救急外来に搬入された瞬間0.03秒くらいで考えたことであり、上記の患者さんには細心の注意を払って治療しています。思慮深く、慎重な私の性格を知っている七戸先生なら信じてもらえるはずです。
北見赤十字病院麻酔科 高橋広巳
Date: Tue, 17 Mar 1998 18:27:07 +0900
六甲アイランド病院 麻酔科・ICU 速水です
エホバの証人の患者さん、いざ出血が限界点にさしかかったら・・・・・・。
我々はそれまでの川向こうの火事を見る野次馬の様な無責任な立場を失って、生かせられることがわかっている患者の命の終演を見守らなければならなくなり、はじめて自分がどうすべきか考え込んでしまいます。
私も、エホバの証人の弛緩出血症例に遭遇しました。深夜、婦人科から緊急呼び出しを受け、単純子宮全摘を行ういきさつを婦人科部長より説明を受け患者を入室、導入し始めました。この患者さん自身はエホバの証人でしたが、ご主人は違いました。導入した直後、婦人科部長が手術前にご主人の立ち会いのもとに、輸血拒否を再確認したいと申し出があり、覚醒させて再確認をしましたが、結局輸血は強く拒否されました。ご主人はがっかりされていましたが、救命の意味でも単純子宮全摘を施行しました。このとき、ご主人立ち会いの元で手術を施行し、術中出血傾向、貧血の増悪、100%酸素下に管理しても進行し続けるアシドーシスを説明しながら手術終了しました。手術終了後、ご主人に、おそらく貧血のために救命できないだろう、輸血しか手がないことを説明し、病院長、担当部長、麻酔科、ICUに対して新たに輸血承諾書を作成し、ご主人の責任下に承諾を得ました。もちろん、救命後、患者さん本人から責められた場合、どうしても太刀打ちできないとは思いましたが、結局輸血施行し救命し得ました。
約2週間後、患者本人が私のところへ挨拶に来て、「色々お世話になりました。私自身としては非常に不満ですが、主人と子供のことを考えてあきらめます。わたしは、今後幸せには成れないと思います・・・」と話しました。私は、実に複雑な心境に置かれたことを思い出します。私は「あなたは、すでに死にました。今いるあなたは以前のあなたではない。子供を授かった時点で新たな人生がはじまったのです。」と話して別れました。
以後、この患者さんには会っておりませんが、結果はまあまあこんなモンだろうと思っています。
もう一度同じことが起こったら、やはり迷う続けることと思います。
だらだら書き記しましたが、現世にいきる私としてはやはり救命に走るだろうと思います・・・
七戸@札幌医大ICUです
皆様からの多くの御意見、アドバイス、とても有り難く拝見いたしております。
なかなかすっきりとHbの上昇は見られません。網状球は248‰(!!)です。あとどのくらい頑張ればいいのかな、とイライラしています。中心静脈血を用いて求めた酸素消費量は40-50ml/minと、代謝抑制を目的として行っている現在の維持療法を評価できる結果だと思います。酸素供給量は200-250程度ですので、通常の安静臥床、ではなんらかのイベントがあった際にはちょっと辛いでしょう。第一病日にはベッド上安静にして経口摂取をしてなんとか非侵襲的に乗り切る方法も検討し、一晩維持したのですが、今の状況とどちらが良かったのかは解りません。経管栄養も開始しています。
昨日非信者の御主人と医療費の支払いについて話し合いをいたしました。現実を説明させていただいたところ、それまであまり考えていらっしゃらなかったようで、非常に困惑しているように伺われました。「うちにはお金がない。子供もこれで三人目だ」ただし、この状況を患者さん御本人が知っていたとしてもきっと笑ってこう言うでしょう。
「それならこのままで結構です、死ぬのは全く不本意ではありません。神の身許、楽園に行くのですから。」と。(現実にICU入室時には子供宛ての手紙には、”お母さんが死んでも悲しまないでね、楽園に行くのだから。みんなでまた楽園で幸せに暮らせるようにお祈りしてね、パパも楽園に行けるといいね”と書いてありました。---御主人の承諾を得て見せていただきました)
ハッキリ言って処置なしです。自殺みたいなもんです。いくら神の教えに背くと地獄で悪魔の炎に焼かれると言っても、残された子供はどうなるのでしょう。
緊急時の輸血の是非については私ではなんとも決めかねます。日本的な判断でで批判も多いでしょうが、いわゆる上役へ判断を仰ぐことになると思います。カッコ悪いですが。
再出血した場合のシュミレーションとして
その1
輸血せずに亡くなられた場合---家族、この場合は御主人かな? から、過失致死、その賠償で刑事、民事で訴えられる。そして何よりみすみす殺してしまったという職業倫理の根幹にふれる問題を一生引きずる。
その2
輸血して救命できた場合---本人から、精神的苦痛を受けた、信教の自由を侵害されたと民事で訴えられる。
その3
輸血したが相談しているうちに判断が遅く間に合わず亡くなられた場合---最悪。なんて自分はバカなんだろう。
今のままではその3が有力。これはまずい。
七戸先生、人工血液の情報は集まりましたか?
医事新報のNo. 3854(平成10年3月7日)号に、北海道日赤血液センターの関口定美先生が紹介文を書いています。
要点としては、
1)ミドリ十字のFluosol-DAは製造・開発が中止となっている。
2)現在、臨床治検が進められているのは、いずれも米国製で、BaxterのHemAssistと、NorthFieldのPolyMemeの2製品だが、この2製品ともヒト由来のヘモグロビンを利用している。
という訳で、人工血液といっても血液製剤のようですね。
九大救急部の財津昭憲です! 私は若干、皆さんとは違った意見を持っているようです。
20年前の古い話になりますが、患者本人も家族もエホバの証人の信者という悪条件に、医原性出血で極度の貧血(3g/dl)に陥らせた患者の治療を一般病院で引き受けた経験があります。
小骨盤腔内感染症で腹腔ドレナージ後に、DICを起こしていた患者に、中心静脈栄養を目的にトライした鎖骨下静脈穿刺に失敗して、気血胸を作り、持続出血で徐々に貧血が進行し、最後にはHb3.0g/dlとなった症例です。
原因が医原性であるので、輸血をお願いしましたが、全く駄目でした。
輸血をすれば、本人は「神にも、家族には見放される!」と言う状況でした。身体的生命は救われても、精神的生命は死ぬと言うわけです。結局、治療は酸素吸入と輸液だけで、進行する貧血は遺憾ともし難いものでした。
2週間位頑張った頃、家族や本人との会話の中で、彼らの宗派では「肉類は駄目だが、肝臓は良い!」と言うことを聞き出して、積極的にレバー料理を食べさせるようにと食事指導をして、これを境に貧血の改善が見られ、救命に成功しました。ICU退室までには1ヶ月を要しました。
緩徐に来た貧血だったので、23DPGが増えてなんとか、生命を維持してくれたものと思います。しかし、人間は以外と強いものだとも感じました。
患者が退院するときに、「神は私を見捨てなかった!」とぽろりと言った言葉を思い出します。
恐らく、彼らはこの逆境を神が与えた試練だと考えているでは無いかと感じました。
その時以来、「医者はサービス業だ! 医者は治療の選択肢をすべて説明するが、治療の決定権は患者本人が持っている。」と考えるようになり、気が楽になりました。
患者さん本人とその家族の希望を可能な限り実現する治療を心掛け、肩肘張らずに、自然体で患者に接するようにしています。
乳酸値の上昇も無いようで、患者の意識もはっきりして、意志もも強固なようですから、酸素吸入と食事療法だけで、集中治療の必要は無いのではありませんか? 本人の希望しない強引な治療を強行することより、家族や子供達と一緒の時が過ごせる個室を与え、精神的安定をはかり、家族とともに神の試練を経験させることを推奨します。 医療者はそれを外からそっと静かに患者と家族を見守ってやるのが良いのではないでしょうか? 身体的生命だけを救うのだと、肩肘張らずに、患者本人と家族に腹を割って、話してみては如何ですか? 患者と患者家族との精神的生命の救済が大切ではないでしょうか? 何れを選ぶかは患者本人と家族だと思います。
阪大麻酔科・谷上博信です。
繰り返しになりますが、当の患者さんとご家族に話を限れば、先生のお考えは正論だと存じます。しかし、「エホバ」に関して言えば、そのために他の多くの患者さんが「割を喰」っている事実は無視できないと思います。また、今回の「輸血4-5単位していれば今日にもICUから出られる」患者さんへの(本
来は不要な)高額な医療費が、健康保険で賄われるとしたら、これも問題です。冷たいようですが、医学的根拠によらず、「個人の信条」によって治療法を選択する「ぜいたく」が許されるのは、自費での自由診療の場合に限られるべきだと思います。
(途中略)
>身体的生命だけを救うのだと、肩肘張らずに、患者本人と家族に
>腹を割って、話してみては如何ですか? 患者と患者家族との精神的生命の救済が大
>切ではないでしょうか? 何れを選ぶかは患者本人と家族だと思います。
しかし、その結果、輸血をすれば救命できたであろう患者の生命を失った場合、欧米人と異なる価値観・生命観を持つ、小生を含めた多くの日本人医師は、自らを「殺人者」として責めることになります(少なくとも小生にとっては、治療手段があるのに傍観して患者を死なせる行為は「殺人」であり、以前、阪大麻酔科でこの議論が行われたときにも、医局員の半数以上が小生と同じ考え方を示しました)。ちなみに、高校の体育の「剣道」を「殺人手段」として受講拒否するこの宗教が、医療従事者に「殺人」を強要するわがままさが小生には我慢できません(ちなみに小生は剣道の有段者です、関係ないか?)。
話が変わりますが、救急の現場と、予定手術患者の術前とでは、患者・医療側とも対応が少し違うように思います。個人的感想を記せば、予定患者では「信仰心(?)」に随分個人差があるように思いました。具体的には、当初の1対1の話し合いでは無輸血に関して絶対的な固執を示さない人の方が多く、それが信者である家族や「教会」関係者と接するうちに「殉教者」のような気分になるのでしょうか、「目つき」「顔つき」まで変わってきて、強硬に無輸血を主張する、というパターンが多かったように思います。この手の人を随分観てきて、小生のエホバに対する認識は、「カルト」やなぁ、というものでした。
念のために申し上げますが、小生は、個人の信条や宗教を無視した医療行為が許されると言っているわけではありません。「医療はサービス業」、仰るとおりで、可能な限り患者さんのご要望に沿うよう努力するのが現代の臨床医のあるべき姿だと思います。
以上、限られた医療資源の中での無限度を越えた無輸血治療には無理がある、医師自らの良心も患者の価値観同様考慮されるべきだ(「エホバ勝訴」と言われた最近の判決でも医師の良心に、より重きをおいています)、の2つが小生の論点です。
広島大学の世良昭彦です。
私も財津先生の意見に賛成です。
私も以前エホバの証人の重症熱傷(22才女性、熱傷面積58%、Burn Index 48、顔面・上半身が主)を経験しました。この方は独身、両親・本人ともエホバの証人でした。
入院直後より両親から輸血拒否の申し出があり、病院の倫理委員会で協議し、「患者および家族の意志を尊重する、しかし輸血の了解を得られるよう説得は続ける」と言う方針で治療を行いました。
ご存じの通り、この程度の重症熱傷は手術が不可欠です。一回の手術による出血量は2000〜3000ccで、輸血が必要で、手術も3〜4回必要です。結局家族および本人からの輸血の承諾は得られず、手術を行うことなく、熱傷による敗血症で亡くなられました。
この患者さんは両親がエホバの証人であったため、小さいときから教会に通い、自然とエホバの証人の教義を信仰するようになった方です。じつは入院経過中一度完全に覚醒した状態で、本人に「手術をしなければ救命の可能性は無い、手術には輸血が必須である」と説明したところ、「私は生きたい、輸血をしてでもよいから手術をして欲しい」という返事がありました。家族面会時にこの話しを両親にしたところ、血相を変えて娘のベッドサイドまでいき、「輸血をしたらサタンになるよ!」と激しい形相で娘を説得し始めました。結局患者さんは両親の説得に応じ、以後断固輸血拒否に戻られました。その後は敗血症の悪化により気管内挿管・持続鎮静となり、本人の意志は確認できず、両親の意見のみで治療を継続し、最後は上記のような結果となりました。患者さんが亡くなられた数週間後、ご両親は「本当にありがとうございました」との言葉も下さいました。
この患者さんを経験して以来、私のエホバの証人に対するスタンスは変わりました。
彼らは真剣に教義を忠実に守ります。それは命を懸けてでも貫かれるものです。教義に反すれば、彼らの信者間では「サタン」として扱われ、信者からも迫害されるようです。実際この患者さんもたとえ熱傷が治癒しても、顔面にひどい瘢痕拘縮を残し、仲間からも、さらには両親からも見捨てられ一人で暮らさねばならないという将来が見えてきました。
この様な中で「救命のため」という言葉が本当に患者のためになるのでしょうか。
私は「輸血拒否」も患者の治療に対する選択の一つと考えます。財津先生の
> その時以来、「医者はサービス業だ! 医者は治療の選択肢をすべて説明するが、治
> 療の決定権は患者本人が持っている。」と考えるようになり、気が楽になりました。
に対して、全く同感です。ガンに対する治療で、手術、抗癌剤、放射線治療という選択枝がある中で、患者がどの治療を選ぶかと全く一緒であるように思います。
輸血を行うことで、命は救えますが、精神的には全く救われない状況に陥ることになるように思えます。
七戸先生の症例に対する具体的な回答にはなっていませんが、エホバの証人の治療に対する選択枝の一つとして、意見を述べさせていただきました。
阪大麻酔科・谷上博信です。
お詫びと訂正です。
[CCN:00724]の
「以上、限られた医療資源の中での無限度を越えた無輸血治療には無理がある」、を
「以上、限られた医療資源の中での限度を越えた無輸血治療には無理がある」、
に訂正して下さい。
申し訳ありませんでした。
西健太郎@三田尻病院外科です。
財津昭憲 wrote:
> 九大救急部の財津昭憲です! 私は若干、皆さんとは違った意見を持っているようです。
> 患者が退院するときに、「神は私を見捨てなかった!」とぽろりと言った言葉を思い
> 出します。
> 恐らく、彼らはこの逆境を神が与えた試練だと考えているでは無いかと感じました。
>
> その時以来、「医者はサービス業だ! 医者は治療の選択肢をすべて説明するが、治
> 療の決定権は患者本人が持っている。」と考えるようになり、気が楽になりました。
> 患者さん本人とその家族の希望を可能な限り実現する治療を心掛け、肩肘張らずに
> 、自然体で患者に接するようにしています。
>
> 乳酸値の上昇も無いようで、患者の意識もはっきりして、意志もも強固なようですか
> ら、酸素吸入と食事療法だけで、集中治療の必要は無いのではありませんか? 本人
> の希望しない強引な治療を強行することより、家族や子供達と一緒の時が過ごせる個
> 室を与え、精神的安定をはかり、家族とともに神の試練を経験させることを推奨しま
> す。 医療者はそれを外からそっと静かに患者と家族を見守ってやるのが良いのでは
> ないでしょうか? 身体的生命だけを救うのだと、肩肘張らずに、患者本人と家族に
> 腹を割って、話してみては如何ですか? 患者と患者家族との精神的生命の救済が大
> 切ではないでしょうか? 何れを選ぶかは患者本人と家族だと思います。
僕も財津先生の意見に賛成です。
これまでの意見の流れを見ていると自分の考え方が医者として失格なんかなーなん て思い始めていましたが、同じ様な事を考えている人がいてくれてほっとしまし た。確かに、患者の身体的な生命だけを救うことが医者の務めではないように思います。
実際に自分がその場に居合わせたらかなり悩むでしょうねー。
でも、すさまじい特殊な治療はしないでしょうね。
ついつい「すさまじい特殊な治療」をしてしまいがちな札幌医大ICU@七戸です。
今朝の検査でHbは3.9、Ht12.6まで来ました。当初何となく一週間頑張れば目鼻がつくと思っていましたが、その通りの経過で、今はちょっとホッとしています。合併症は今のところ見られていません。今後Hbが5を越えた時点で
・復温
・鎮静、筋弛緩薬止め
・人工呼吸離脱、という順序で進めてゆくつもりです。
医療の現場にいる人間として、今回のような局面でどのようなスタンスを求められるかという事についてはきっと結論は出ないのでしょう。私はただ単純に患者さんが救命できる可能性が高まった事に、ご主人、幼い娘さん達とともに喜びを感じ、また職人の側面を持つ、医者としての喜びと幾許かの満足感を感じています。もちろん結果がすべてなので不幸な結果が待っていた場合この思いは崩壊してしまいますが。
西健太郎@三田尻病院外科です。
他のメンバーの方も同じだと思いますが、心から七戸先生達のご努力にエールを送っています。
実際に目の前に患者さんがいて、何かしてさしあげれられることがあれば、誰もが実行に移すと思います。
先生達の患者さんが無事回復されることを心からお祈りしております。頑張って下さい。
やあ,すごいですね.頑張りに称賛を送ります.
七戸先生、本当にご苦労さまでした。広島の地より多くの同僚達の、ねぎらいの言葉
をあわせて送ります。
松本 尚浩@産業医科大学麻酔科と申します.
七戸先生,
> エホバの患者さんは無事ICUを退室いたしました。皆様ありがとうございました。
この1行に様々な気持ちが込められているものと存じます.
私どもが困ったときには,先生の貴重なご経験からご指導をお願いいたします.